研究課題/領域番号 |
22KJ1331
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補助金の研究課題番号 |
22J21252 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分19010:流体工学関連
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
脇村 尋 東京工業大学, 工学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
2024年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 表面張力 / 非構造格子 / 低散逸解法 / 圧縮性気液二相流 / 相変化 / BVD法 / 低散逸誤差 / 緩和計算 |
研究開始時の研究の概要 |
キャビテーション等に代表される相変化を伴う圧縮性自由界面多相流において,安定かつ高精度な数値解法を開発する.既存の計算手法を根本から見直し,自由界面や接触不連続近傍の数値振動・数値散逸誤差の抑制を目指す.具体的には,①BVD原理に基づく空間再構築法の改良,②数値モデルの計算精度の理論解析を行う.加えて,数値解法の実用性の検証・向上のため,③非構造格子への展開,④ロケットエンジン内部の実現象の計算を行う.
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研究実績の概要 |
令和5年度の主な研究成果は次の3点である. [1] 表面張力の再現によく用いられるCSFモデルは,その計算方法によっては界面で数値振動誤差を発生させることが知られている.本研究では拡散界面モデルにおいて数値振動誤差を回避する手法として,界面曲率の値を界面拡散領域において一定値に近づくようにフィルタリングを行う計算法を実装した.BVD法の計算にこのフィルタリング操作を加えることで,気液界面を低散逸かつ非振動で捉えることができた. [2] これまで取り組んでいたBVD原理に基づく高解像度数値解法の開発を非構造格子に展開し,既存解法の性能を上回る新規解法を開発した.代表的な既存解法であるMLP法と,2次曲面を持つシグモイド型関数により補間を行うTHINC/QQ法を非構造格子上における許容補間関数とし,これらをBVD原理に基づき組み合わせた.開発したハイブリッド型手法は,滑らかな解でMLP法,不連続解でTHINC/QQ法を選択し,不連続解における数値散逸誤差の抑制に成功した.この成果により,複雑形状の計算領域を持つ問題に対しても高解像度の数値解析が可能となり,計算手法の実用性を向上させた. [3] 非構造格子におけるBVD法を圧縮性気液二相流に適用し,衝撃波と気液界面をともに高解像度で計算できることを示した.圧縮性気液二相流における非保存型の方程式モデルを扱う際,非構造格子では直接的に非保存項の値を評価する必要が生じる.本研究では,非保存項の体積分を近似的にセル境界上の面積分に置き換え,リーマンソルバーを用いて非保存項を評価することで安定な計算を実現した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,①空間再構築における計算アルゴリズムの改良,②数値モデルの計算精度に関する理論解析,③非構造格子への拡張,④実現象のシミュレーション,の通りに実施する計画を立てており,令和5年度末時点で①~③を概ね完了することができた.当初の計画には含まれていなかった粘性や表面張力の効果的な計算も行うことができ,順調に進展している. ①について,既存解法に含まれる過剰な数値散逸誤差を抑制するBVD法に着目し,THINC関数の勾配パラメータの値を解の滑らかさに応じて決定する新しい計算手法を開発した.この手法では従来のBVD法と比べて計算精度とコストが改善されており,圧縮性気液二相流の計算において気液界面を低散逸で捉えることに成功した.②について,いくつかのベンチマークテストを行い,空間再構築を行う物理変数を準プリミティブ変数(密度のみ保存変数)とすることで,数値振動誤差を低減する数値結果を得た.③について,BVD法を非構造格子に拡張し,既存解法よりも低散逸な新規解法を構築した.相変化を含む圧縮性気液二相流に適用し,既存解法では捉えられない動的に生成される気液界面を非構造格子上で再現することに成功した. ④の実現象解析に当たって必要となる粘性及び表面張力の計算に既に着手している.界面曲率に対するフィルタリング操作や,解の高波数成分からの寄与を抑えるα-damping法を実装しBVD法と融合させることで,簡単な数値テストにおいて高解像度を保ちながら数値振動誤差を抑制できることを確認した. 研究計画全体を俯瞰して,既に液体ロケットエンジンなどの実問題を模擬した数値計算の準備を進めていることから,現在までの進捗状況はおおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
本研究で開発した新規解法を,様々な相変化現象の解析に適用し,開発手法のロバスト性を検証する必要がある.具体的には,円柱周りやウェッジでの剥離渦で発生するキャビテーションや,翼形表面付近のシートキャビティの挙動を解析し,気液界面の動的な生成の再現を目指す.既存解法では過剰な数値散逸誤差により再現が困難な現象を明らかにすることで,本研究による開発手法の妥当性を示す. 様々なキャビテーションを含む相変化現象において開発手法が有効であることを確認した後,液体ロケットエンジン内部の燃焼流れ解析に取り組む.近年盛んに研究されているピントル型噴射器を計算対象とし,液体燃料の噴霧及び微粒化現象を計算する.液滴の気化や微粒化といった再現困難な現象について,本研究で開発した計算手法を用いて明瞭に再現し,その実用性を明らかにする.
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