研究課題
特別研究員奨励費
使用する乱数が入力に対して定数長に限定された秘密計算プロトコルに関する研究を行う.強い物理的仮定に基づく計算モデル(スタックモデル)では,乱数を使用せず,任意の関数を安全に計算できるが,一般的な計算モデル(プレーンモデル)では,乱数を使用しない場合はAND関数を安全に計算できないことが知られている.スタックモデルにおけるプロトコルを,定数長の乱数を追加しつつ,プレーンモデルにおけるプロトコルへ段階的に変換する.変換を通じて,プレーンモデルにおいて乱数を定数長に限定した状態で計算可能な関数クラスや達成可能な安全性を明らかにすることを目指す.
本研究の目的は,秘密計算について,一般的な計算モデル(プレーンモデル)において乱数を定数長に限定した状態で計算可能な関数クラスや達成可能な安全性を明らかにすることである.そのために,強い物理的仮定に基づく計算モデル(スタックモデル)における乱数を使用しないプロトコルを,定数長の乱数を追加しつつ,プレーンモデルにおけるプロトコルに変換することを目指している.本年度はスタックモデルのプロトコル(private PEZプロトコル)と同じく物理的仮定を用いる秘密計算の一種であるカードベース暗号の中でも,物理的ゼロ知識証明(物理的ZKP)と呼ばれる,カード等を用いてゼロ知識証明を行うプロトコルについて研究を行った.物理的ZKPでは計算機を用いる通常のゼロ知識証明では達成できない性質を達成できることが知られており,そのギャップの考察を通じて,定数長の乱数しか使用せず秘密計算を実現する手法について考察を行った.ギャップに関する知見をある程度得られたため,ギャップを上手く定数長の(相関)乱数で表現することでプレーンモデルでのプロトコルへの変換を試みたが,具体的な成果を上げるには至らなかった.一方で,物理的ZKPに関しては新たなプロトコルを提案し,和文論文誌(電子情報通信学会和文論文誌A分冊,査読有),国際会議(COCOON2023,査読有),国内会議(SCIS2024・CSS2023・ISEC研究会,全て査読無)で発表を行った.研究期間全体では,カードベース暗号プロトコルやprivate PEZプロトコルに関して効率化や新たなプロトコルの提案を行い,査読有り国際論文誌1本,査読有り和文論文誌1本,査読有り国際会議1本,査読無し国内会議6本(内1つは優秀論文賞受賞)の論文の発表を行った.また,招待論文や招待講演の機会には提案手法の紹介を行うなどアウトリーチ活動にも取り組んだ.
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
電子情報通信学会和文論文誌A分冊
巻: J107-A (11)
電子電子情報通信学会論文誌A 基礎・境界
巻: J106-A 号: 8 ページ: 214-228
10.14923/transfunj.2022JAI0002
IEICE Transactions on Fundamentals of Electronics, Communications and Computer Sciences
巻: E106.A 号: 3 ページ: 315-324
10.1587/transfun.2022CIP0021