研究課題/領域番号 |
22KJ1373
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補助金の研究課題番号 |
22J23260 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分20020:ロボティクスおよび知能機械システム関連
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
鈴木 大樹 電気通信大学, 情報理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
2024年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | GCaMP / image analysis / in vivo imaging / neurovascular coupling / somatosensory cortex |
研究開始時の研究の概要 |
脳の解剖学的構造や生理学的機能を微小空間内の個々の細胞またはそれらのネットワークレベルで理解することは,脳疾患や脳老化のメカニズムを解明する糸口として重要である. 先行研究において,機能刺激に対して大脳皮質神経細胞の賦活と同時に毛細血管において拡張収縮応答がみとめられている. しかしながら,局所的な神経細胞の賦活と血管の拡張収縮応答の空間的な関係性と毛細血管の血流調節機構は明らかでない. そこで本研究では二光子顕微鏡法を用いて、in vivoで神経細胞活動のイメージングと脳微小血管の蛍光造影を三次元で行うことで,血管構造ネットワークから血管の役割と血流調節機構を推定することを目的とする.
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研究実績の概要 |
大脳皮質の神経細胞(CaMKIIのプロモーター下)に細胞内カルシウムイオンのセンサータンパク質GCaMPを発現させた遺伝子改変マウスを用いて神経細胞の活動と脳血管の運動について解析した.まず二光子レーザー顕微鏡を用いて神経細胞の活動と同時に撮像した脳微小血管の構造画像を骨格化し,得られた数千点の血管中心線上のノードにおいて血管径を自動で計測するためのソフトウエアを構築した.つぎに神経細胞の重心位置を自動で抽出し,神経細胞の活動を定量化するためのソフトウエアを構築した.本研究で開発したこれらの手法を用いて脳の毛細血管の形態に関するビッグデータ分析を行った結果, 脳の毛細血管は安静時に少なくとも2種類の状態をとることが示唆された. 一つは安静時の直径が比較的大きく, 神経活動に関係なく安定した構造をとる毛細血管であり,もう一つは安静時の直径が比較的小さく, 神経活動に応じて構造を変化させる毛細血管である.これらの結果から,神経活動に対してすべての毛細血管が局所的な脳血流の調節機構に関与しているわけではないことが明らかになった.しかしながら、現在の画像の視野範囲では脳の動脈から静脈までに至るネットワーク構造や分岐の全数を計測することが難しいことが課題である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究への取組として、二光子レーザー顕微鏡で撮像した脳毛細血管の構造画像に関するビックデータ解析を行い、安静時における脳毛細血管の状態を2種類に分けられることを明らかにした。さらにこの安静時の状態が機能的充血における毛細血管の運動性の違いに関連していることを見出し論文発表した。現在、この脳毛細血管の運動性の違いを説明するための解剖学的な構造の違いに注目し、特に脳毛細血管を被覆する周皮細胞の接着度や細胞体と細胞突起の識別に関して画像解析の技術を駆使した研究開発を進めている。当該年度における研究成果として、査読付き国際論文1本(第一著者)が当該分野のトップジャーナル(IF: 6.96)に採択され、また国内3件と国外3件の研究発表を活発に行った。 研究計画の後半においては、量子科学技術開発機構 量子生命科学研究所の実習生として、広視野撮像が可能なメゾスコピック顕微鏡や複数の近赤外超短パルスレーザーを搭載した単一細胞の光刺激と二光子イメージングの同時操作が可能な最先端の実験装置を使用した実験を計画している。よって今年度は、単一の周皮細胞を生体内で介入した際の脳毛細血管の状態遷移や運動性に関する支配領域の同定について研究の進展が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はより広視野での撮像が可能なメゾスコピック顕微鏡を用いて脳の微小血管構造の定量評価を行う. また残りの研究計画として提案している「局所的脳血流調節機構に関連したグリア細胞の同定とグリア細胞による脳血流調節の支配範囲について明らかにする」という研究課題については,グリア細胞よりも直接的に血管の運動に関わっていることが明らかになったペリサイトを研究の対象にする.予備的ながら安静時における脳の毛細血管の状態がペリサイトの細胞体とそれ以外の被覆部位で異なることを見出している.そこで次年度は,オプトジェネティクスの技術を用いて積極的にペリサイトのみを賦活させた際の脳血流調節の支配範囲について明らかにする.
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