配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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研究開始時の研究の概要 |
ある日の東京都の平均気温を予想する時に, 同じ日の神奈川県の平均気温が25℃であると伝えられた場合, 人は東京都の平均気温予想を25℃に近づける可能性がある. このように, 先行提示した数値に後続の判断が近づく現象を係留効果という. 本研究では, 小さな数値を人に提示し, 人がその数値を目標にして行動する係留効果を発生させることで, 特定の行動を減らせるかどうかを実験的に検討する. 実験対象は, 車両速度 (制限速度超過を減らす), 電力使用量 (電力の浪費を減らす), 水使用量(水の浪費を減らす)の3種類を利用する.
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研究実績の概要 |
先行して提示した数値情報に後続の数量判断が影響する現象は, 係留効果として知られている. 本研究の目的は, 人の認知バイアスの一種である係留効果をナッジとして応用することで, 1.ナッジが長い期間継続するのかどうか, 2.ナッジの時系列変化, 3.ナッジで導いた行動への満足度を高めることができるのかどうかの3点を検討することである. 本研究は, 車両速度, 電気使用量, そして, 水使用量を研究対象に設定して実験を実施した. これらの対象は, 制限速度超過, 電気や水の浪費を抑える需要がある上に, 時系列変化を確認しやすいことから研究対象に設定した. 車両速度を対象にした実験は, Web調査やドライビングシミュレーターを使用して, 係留効果が判断や行動にどのように影響するのか分析し, 研究内容を国際ジャーナルに投稿した. 電気使用量を対象にした実験は, 1年以上かけて実施した実験のデータ収集が終了し, 係留効果が判断や行動に与える長期的な影響を分析している. 水使用量を対象にした実験は, 認知バイアスと金銭的インセンティブの関係性を考慮しながら, 実験結果を分析し, 研究内容を国際ジャーナルに投稿した. また, 水道事業体と協力し, 人の水使用行動について, データ分析を進めている. 上記の研究から, 係留効果を応用した手法によって, 制限速度超過や, 電気の浪費を抑える効果があることが示唆された. 本研究の手法は, 罰金や値上げのような金銭的インセンティブに頼らない手法のため, 実施する際に需要家からの反発が少なく, 金銭的インセンティブを重視しない人に対しても影響を与える手法だと予想される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
車両速度を対象にした実験は, データ分析が終了し, 既に論文を国際ジャーナルに投稿した. 電気使用量を対象にした実験は, 当初予定していたスケジュール通りにデータを収集し, 現在はデータを分析している. 水使用量を対象にした実験は, データ分析が終了し, 既に論文を国際ジャーナルに投稿した. また,水道事業体と協力しながら, 新たに人の水使用行動について, データ分析を進めている.
上記のように, 当初の計画通りに研究が進んでいることから,「おおむね順調に進展している」を選択した.
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今後の研究の推進方策 |
電気使用量を対象にした実験は, 係留効果を応用したナッジが判断と行動の両方に長期間影響するのかどうかを分析していく. そして, 日本で開催される2024年の学会で, 研究成果を発表する予定である. また, 研究内容を整理し, 論文を国際ジャーナルに投稿する.
水使用量を対象にした実験は, 認知バイアスや金銭的インセンティブが判断と行動の両方に長期間影響するのかどうかを分析していく. そして, 2024年の国際学会 (the 46th Annual Meeting of the Cognitive Science Society) で, 研究成果を発表する予定となっている.
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