研究課題/領域番号 |
22KJ1406
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補助金の研究課題番号 |
22J15362 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分27020:反応工学およびプロセスシステム工学関連
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
中村 悠人 横浜国立大学, 大学院理工学府, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | クロスカップリング反応 / 有機電解反応 / フローマイクロリアクター |
研究開始時の研究の概要 |
二種類の化学構造の間に結合を形成する「クロスカップリング反応」では、PdやNi等の金属触媒により発生するカチオン等価体とアニオン等価体の間に結合が形成されるが、特に医薬品の合成プロセスにおいて金属成分の残留が問題視されてきた。これらの触媒反応を電気化学的な陽極反応(カチオンの発生)と陰極反応(アニオンの発生)で置き換えれば、金属触媒を用いないクロスカップリング反応が実現する。 本研究では、陽陰極間の距離が数十マイクロメートルと極めて小さな「マイクロ電解セル」を反応器に用いることで、両極で発生するカチオン/アニオン同士の反応を促進し、高収率な電気化学的クロスカップリング反応の実現を目指す。
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研究実績の概要 |
二種類の化学構造の間に結合を形成する「クロスカップリング反応」では、PdやNi等の金属触媒により発生するカチオン等価体とアニオン等価体の間に結合が形成されるが、特に医薬品の合成プロセスにおいて金属成分の残留が問題視されてきた。これらの触媒反応を電気化学的な陽極反応(カチオンの発生)と陰極反応(アニオンの発生)で置き換えることで、金属触媒を用いないクロスカップリング反応の実現を目指している。本研究を達成する上で重要な課題は、不安定なカチオン/アニオン中間体が分解してしまう前にクロスカップリングを進行させる点にある。そこで、本年度は第一にカチオン/アニオンが安定化される電解液組成の選定、第二に陽極/陰極で発生したカチオン/アニオンが出会うまでに要する時間を短縮できる反応器の開発に取り組んだ。 第一の電解液組成の選定について、カチオン/アニオン中間体が長寿命化する支持電解質と溶媒の組み合わせとして「ヘキサフルオロリン酸テトラブチルアンモニウム/1,2-ジクロロエタン」を見出した。この電解液の組成において、支持電解質と溶媒はどちらもカチオン/アニオン活性種に対する相互作用が弱いことから、中間体と電解液の間で望まない副反応が進行することがなく、中間体を安定的に発生させることが可能となった。 第二の反応器の設計について、カチオン/アニオンが出会うまでに要する時間を短縮する目的で、陽極/陰極間の距離が数十マイクロメートルと非常に狭い「マイクロ電解セル」を開発した。このマイクロ電解セルは、事前検討の段階では接着剤を硬化させて作製したものを用いていたが、更なる実験の効率化を志向し、容易に組み立て・分解できるマイクロ電解セルを新たに開発した。このマイクロ電解セルを使用することで、30分に1回程度の高頻度な電解実験が行うことができることが実証された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
不安定なカチオン/アニオン中間体が分解してしまう前にクロスカップリングを進行させる目的で、現在までに電解液組成の選定、およびマイクロ電解セルの設計が完了している。 クロスカップリング反応そのものは未だ実現していないが、カチオン/アニオン種の化学構造そのものを、クロスカップリングの進行しやすいものに変更することで、本研究課題の期間内にクロスカップリングが実現し、当初の目的が達成するものと期待している。 具体的には、本研究ではこれまでカチオン種/アニオン種ともにベンゼン系の化合物を用いてきたが、カチオン種にカルバメート系の活性種を使用することでクロスカップリング反応が進行することがごく最近に報告された(J. Am. Chem. Soc. 2022, 144, 9874-9882)。その報告では本研究が使用しているようなマイクロ電解セルではなく、通常のビーカー型の反応器が使用されていたことから、本研究においてもカチオン種をカルバメート系に変更した上で、現在までに選定・設計した電解液や電解セルを使用することで、反応効率が向上すると同時に、既報論文では使用できなかったより不安定なカルバメート系カチオン種の使用も可能になると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きクロスカップリング反応の実現を目標に研究を推進する。具体的には、現在までに選定・開発してきた電解液組成およびマイクロ電解セルを使用した上で、陽極反応に利用するカチオン種を、これまでのベンゼン系化合物からカルバメート系化合物へと変更する。既報論文の知見によると、カルバメート系化合物をカチオン種に用いることで、クロスカップリング反応の進行が期待される。 もしクロスカップリング反応が進行しない場合は、その原因が本研究で用いる電解液組成あるいはマイクロ電解セルに由来するものと考えられる。現時点で二つの原因が想定される。第一に本研究で使用する電解液組成において、カチオン/アニオンが過剰に安定化されることで、むしろクロスカップリング反応の進行が妨げられてしまうという可能性。第二に、本研究で使用するマイクロ電解セルにおいて、陽極/陰極間距離が非常に狭いがゆえに何らかの要因でクロスカップリング反応の進行が妨げられてしまうという可能性である。前者に関しては、既報論文を参考に電解液組成を適宜変更することで解決され、後者に関しては陽極/陰極間距離をより長く確保することにより解決されると期待できる。以上の方策に則りつつ、クロスカップリング反応の実現、および既報論文と比較した反応効率や基質汎用性の更なる向上を目指す。
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