研究課題/領域番号 |
22KJ1407
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補助金の研究課題番号 |
22J15369 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分20020:ロボティクスおよび知能機械システム関連
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
松田 涼佑 横浜国立大学, 大学院理工学府, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | ソフトアクチュエータ / マイクロ流路 / ストレッチャブルセンサ |
研究開始時の研究の概要 |
柔軟材料及び微細加工技術を用い,指先に六点の膨張・収縮ソフトアクチュエータを搭載した点字ディスプレイグローブを作製する.外部から送信された文字情報を点字データへと変換し,風船様のアクチュエータを駆動させることで指先を刺激し点字の伝達を行うことができる.またグローブの手首部分には加速度センサを搭載し,手の移動速度を読み取ることで手指の移動に合わせて点字を発現することができる.これらの電気部品類は液体金属を用いた微細配線によって電気的に接続する.これにより存在しない点字を通常の点字と同様指でなぞるように読み取ることが可能となり,点字習得者の文字読解に大きな一助となる.
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研究実績の概要 |
当年度の研究において,申請者は主に二つの研究実績を達成した. まず電源やヒーター,ポンプを含むあらゆる外部機器を排し,ソフトロボット,またはウェアラブルデバイスとして駆動する柔軟なアクチュエータの作製を行った.作製したアクチュエータは人体表面,もしくはその近傍で駆動することを想定し,特に手指機能の一部を代替できる程度の機能性として1 N前後の駆動力を有している.アクチュエータの駆動を外部機器なしに実現させるため,本研究ではマイクロ流路システムを用いたハンドポンプによる輸液システムを採用した.このポンプを用いて化学反応を惹起し,気体を生成することで風船型アクチュエータを駆動させる.これらの技術により,完全に外部電力不要のソフトアクチュエータを作製した.本機構はハンドポンプにより過酸化水素水を輸液し,これを触媒である二酸化マンガンと反応させることで酸素を生成,この酸素で風船を膨張させることで駆動力を得る.また,化学反応部に多孔質樹脂を用いることで液体と触媒の接触面積を増大し,反応効率を高めることに成功した. 次に金属コンポジットとイオン液体をゴム材料に混合し,高い伸縮率を維持しつつ,伸長時に導電性が大幅に向上する特殊なゴムコンポジット材料を作製した.絶縁状態においては12 V電圧を用いる電気回路に対して十分な絶縁性を持つ抵抗値として1 MΩ以上,導電状態では回路駆動に必要な電流として10 mA程度を流出可能な1 kΩ以下の電気抵抗を実現した.また伸長比は,ストレッチャブルデバイスの母材として使用されることの多い一般的なゴム材料である天然ゴムやポリウレタンシート類と同等の500~600 %程度を有している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では電磁アクチュエータとマイクロ流路を用いたウェアラブルな点字ディスプレイデバイスの作製を計画している.この実現のため,柔軟材料を用いた膨張・収縮を繰り返すアクチュエータの提案がまず求められた.この実現のため,シリコーン系ゴム材料を用いた風船型ソフトアクチュエータの作製に取り掛かったが,その過程でアクチュエータの駆動原理を根本から改変した新たなタイプのソフトトボティクスデバイスの考案に至った.これにより従来には実現されていなかった「電力・外部機器完全不要型」という画期的なソフトロボットの作製に成功し,ハイレベルな国際Q1ジャーナルへの掲載も実現した.またソフトアクチュエータの駆動には必ずフィードバックとなるセンサ材料も必要であると考え,金属粉体と柔軟なゲル材料を併用した高伸縮可能なセンサの作製に成功し,こちらもQ1ジャーナルへと掲載された.このように当初の目的を実現するうえで必要となる各要素をさらに発展させることで新たな実績へとつなげることに成功しており,本研究課題は計画以上に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
前述の通り,本研究課題において現在はアクチュエータおよびセンサの作製に成功し,さらにそれぞれをより発展させることで独立した研究実績として実現させている.したがって今後はこれを統合し,アクチュエータとしての駆動とセンサによるフィードバックを両立させたデバイスとして完成させる必要があると考えている.一方で現在までの研究経過において,当初予定していた電磁アクチュエータによるソフトアクチュエータ駆動はその出力の低さから困難であることが判明したため,今後はこれを解決するための新たな駆動原理の模索が要求される.現在までに実現した駆動方式は未だ反応速度に課題があるため,点字のリアルタイム表記には不足がある.そのため電気駆動が可能な空圧ポンプや油圧ポンプを用いることで,高出力・高反応速度を両立したアクチュエータ駆動を実現する計画である.加えて本研究ではデバイスの駆動に文字の点字変換やそれに基づいたアクチュエータ駆動といった高度な信号処理を要することから,これらを動作するためのシステム構築を行う.さらにこのようなシステムの駆動をウェアラブルデバイスという限られた領域内で行う必要があるため,回路基板の微細化や省電力化といったソフトウェア関連における課題解決にも取り組む計画である.
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