研究課題
特別研究員奨励費
古代DNAに含まれる、古代人体内に存在した細菌やウイルス由来のゲノム配列を調べることによって古代人の健康状態との関連性や、それぞれのウイルスの長期的な進化過程を明らかにすることができる。本研究では、これら古代のウイルスや細菌の配列を対象に網羅的な同定を試みる。また、古代ウイルスの同定に必要な現代人歯髄内のウイルスのリファレンス配列が不足しており、相同性検索時にウイルス検出力が低下している。そのため、現代人歯髄中のウイルスリファレンス配列の拡充も試みる。加えて、ウイルス進化についての理解を深めるべく、現代のウイルスの持つ個々の遺伝子の進化過程についても考察を行う。
縄文人をはじめとする古代人の歯髄や歯石、糞石などに存在したウイルスについて調べるために、上記のサンプルから得られた古代DNAのゲノム解析を実施した。前年度までに共同研究によって取得されたシーケンシングデータや公共データベースに登録のあるシーケンシングデータを用い、データ中に含まれる古代ウイルスをバイオインフォマティクス解析によって探索した。ウイルス探索の方法として、既知のウイルスリファレンスゲノム全体に対する相同性を基に探索を行う相同性検索に加え、ウイルス遺伝子やゲノムの塩基組成を基にした機械学習法や宿主細菌のCRISPRを用いた探索手法など5つの異なる手法を組み合わせてより多くのウイルスの同定を試みた。その結果、4万を超える古代ウイルス配列が同定された。探索された古代ウイルスについては、遺伝子内容や既知ウイルスとの相同性などをもとにウイルス分類群を明らかにし、ゲノムの特徴づけを行った、その結果、検出された古代ウイルスの大半は古代人体内の細菌に感染するファージであることが明らかとなった。現時点で複数のウイルスで、宿主である口腔内細菌との対応関係も確認されている。この結果をまとめ、現在論文の執筆を行なっている。一方で、糞石のゲノム解析については、ウイルスに加えてその宿主の腸内細菌や食物由来の真核生物のゲノム情報の探索を相同性検索によって探索を行った。その結果、現代人の腸内細菌やウイルス、食物由来のゲノム配列と相同な配列が多数検出された。中でも、腸内細菌とそれに感染するウイルスの配列に類似の配列を同時に検出し、宿主とウイルスの関係性について知見が得られた。これらの結果を統合してPLOS ONEにて報告を行った。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 2件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 8件) 学会発表 (26件) (うち国際学会 6件)
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