研究課題/領域番号 |
22KJ1419
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補助金の研究課題番号 |
22J10044 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分33010:構造有機化学および物理有機化学関連
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研究機関 | 総合研究大学院大学 |
研究代表者 |
長瀬 真依 総合研究大学院大学, 物理科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | π共役化合物 / 非平面 / チオフェン環 |
研究開始時の研究の概要 |
有機π共役化合物は、溶解性や柔軟性ならびに魅力的な電子的性質をもち、有機電界効果トランジスタや有機薄膜太陽電池、有機発光ダイオードの有用な半導体材料である。有機半導体開発に際して、デバイスによって適切な分子の配列・配向方向が異なることが問題の一つに挙げられる。 本研究では、三次元電荷輸送能をもつ結晶性有機π共役化合物を開発する。三次元に電荷を輸送できれば、配列・配向制御の必要のない、さまざまな用途に利用可能な有機半導体材料を提供できると考えている。
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研究実績の概要 |
三次元電荷輸送能をもつ結晶性有機分子の開発を目指し、複数のチオフェン環が縮環した非平面芳香族分子の合成に取り組んだ。非平面芳香族分子は一般的にひずみエネルギーにより不安定であり、またその合成法が限られているため、非平面芳香族分子の合成例は平面芳香族分子に比べて未だ少ない。当該年度は、5つおよび6つのチオフェン環が全て3,4位(ベータ位)で10員環または12員環に縮環した分子であるチオフェン環状5量体(5T)およびチオフェン環状6量体(6T)の合成に成功し、またその性質を明らかにした。Ni触媒を用いたホウ素化反応、Pd触媒を用いた鈴木宮浦クロスカップリング反応、およびNi錯体を用いたホモカップリング反応を適切に活用し、高い反応性をもつアルファ位を保持しながらも環状構造を構築することに成功した。鈴木宮浦クロスカップリング反応においては、過剰量の有機ハロゲン化物の使用により、ポリマーの生成を効果的に抑制できたと考えている。また単結晶X線構造解析より、5Tおよび6Tの固体中の立体構造を確認した。チオフェン環状4量体および5T、6Tの立体構造を比較した結果、3,3'-ビチオフェン部位の最小二面角がチオフェン環の数の増加に伴い減少することが明らかになった。さらに2つの分子の1H NMRスペクトルより、チオフェン環の入れ替わりの速さが異なることがわかり、その違いが量子化学計算によって算出した異性化障壁の差によって説明できることを明らかにした。得られた5Tおよび6Tは、大環状の非平面構造と反応活性なアルファ位を活用した新たな縮環芳香族化合物合成のプラットフォームとして有望であると考えている。
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