研究課題/領域番号 |
22KJ1436
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補助金の研究課題番号 |
22J20882 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分60040:計算機システム関連
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研究機関 | 総合研究大学院大学 |
研究代表者 |
西尾 真 総合研究大学院大学, 複合科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
2024年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2023年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2022年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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キーワード | マルチコア量子計算 / 量子インターコネクト / 量子誤り訂正符号 / フォールトトレラント量子計算 / 時間多重 / 量子回路最適化 / Defect Braiding / プログラミング言語 |
研究開始時の研究の概要 |
大規模なフォールトトレラント量子計算実現の為、量子インターコネクトやマジック状態蒸留、符号スイッチンク等を含む量子計算機クラスタを設計し、それらを効率的に扱うためのシステムソフトウェアを定式化する。1年目には、量子計算機クラスタ上のプログラミング言語やフォールトトレラント量子回路最適化問題の定式化を行う。2年目には、クラスタ上に量子回路や量子変数を割り当てるシステムソフトウェアの定式化・設計を行う。3年目には、量子誤り訂正符号変換プロトコルを定義し、ユニハーサルゲートセット実現の為の符号スイッチングや、量子計算と量子インターコネクトで異なる符号間の変換コストを評価する。
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研究実績の概要 |
本年度は複数量子プロセッサから成る量子計算機クラスタにおける、プログラム最適化手法及びプログラミング言語の研究を行なった。 1.光子の時間多重を用いることで、複数の制御量子ビットを持つ制御ゲートの要するゲートコストを大幅に削減可能であることを示した。更に、この手法により損失誤りの多い量子通信路において有効である量子Reed-Solomon符号の符号化回路が大幅に最適化可能であり、フォールトトレラント分散量子計算のオーバーヘッドの軽減に有効であることを示した。 2.表面符号上の多量子ビットゲートをDefect Braidingによって実現した際のトポロジカル量子回路を最適化する問題を定式化し、その計算量を示した。 3.量子計算機クラスタ上における量子プログラミング言語InQuIRを提案した。InQuIRは文法及び操作的意味論が形式的に定義されており、型システム等を用いた形式的検証への展望を示した。 これらの成果は量子クラスタ上のフォールトトレラント量子計算の実現可能性を高め、計算機科学的理解を進展させるものである。研究の成果を元に、Physical Review A及びIEEE Transactions on Quantum Engineeringに論文を掲載した。また、CLEO-PR2022、Quantum Resource Estimation 2023、Quantum Information Processing 2023において発表を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は量子計算機クラスタ上のプログラミング言語の設計を行なった。プログラミング言語の文法に加え、操作的意味論を定義したことで、今後分散量子プログラム解析に型システムをはじめとする形式的手法が適用可能になった。プログラミング言語は量子インターコネクトを用いた分散量子計算のシステムソフトウェアを評価・解析する上で不可欠なものであり、今後分散量子計算のためのシステムソフトウェアを開発する上でも極めて有用である。この研究の成果を用いることで、二年目に実施予定であった項目3を大幅に短縮可能である。 さらに、量子プログラム最適化の計算量的側面と光学系における量子回路最適化に取り組んだ。これらの成果は項目2に該当している。 現時点では魔法状態蒸留(項目1)や量子誤り訂正符号の符号スイッチング(項目4)に関する研究はあまり進んでおらず、今年度と来年度に実施予定である。特に項目1に関しては魔法状態蒸留に用いられる3直交符号の探索に関して計算を進めており、今年度中に一定の成果が見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はフォールトトレラント量子計算において最も大きなオーバーヘッドである非クリフォードゲートのコスト削減のための研究を行う。実現手法として魔法状態蒸留や符号スイッチングが挙げられるが、最近の研究成果は魔法状態蒸留の符号スイッチングに対する優位性を示唆しているため、主に魔表状態蒸留に関して研究を行う。魔法状態蒸留において3直交符号をはじめとする符号の符号空間を用いる場合があるが3直交符号のサブクラスの探索は十分に進んでいない。そこで、LDPC性などの良い性質を持つ3直交符号を組み合わせ論的に探索し、それらを用いた場合の真表状態蒸留のコストを明らかにする。 また、分散量子システムや物理系がハイブリッドな量子情報処理において非クリフォードゲート実行以外の目的で複数の量子誤り訂正符号を必要とすることがある。このような場合に符号間の状態変換に伴うオーバーヘッドを定量的に評価する。
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