研究課題/領域番号 |
22KJ1476
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補助金の研究課題番号 |
22J14544 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分29020:薄膜および表面界面物性関連
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
五十嵐 陽彦 金沢大学, 新学術創成研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 原子間力顕微鏡 / オペランド計測 / イオン液体 / 電気二重層トランジスタ |
研究開始時の研究の概要 |
近年、エネルギー・環境問題の観点から、イオン液体(IL)を用いる電気二重層トランジスタ(EDLT)に注目が集まっているが、この動作機構の根幹を担うEDLT基板/IL界面の構造が解明されていないために、EDLTの高性能化や実用化を妨げている。この問題を解決するために、固液界面構造をサブナノスケール空間分解能で可視化する3次元走査型力顕微鏡(3D-SFM)を用いたEDLT基板/IL界面のオペランド計測技術の開発を行い、ナノ界面構造からデバイスの動作機構の解明を行う。
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研究実績の概要 |
本研究では、電気二重層トランジスタ(EDLT)の動作環境下におけるEDLT基板/イオン液体(IL)界面を直接観察できる3D-SFMの性能や機能、解析法を大幅に発展させ、EDLT内部のナノ界面構造の3D-SFM計測からEDLTデバイス機能の発現メカニズムの解明に取り組む。 初年度である今年は、以下の課題に取り組んだ。まず、大気雰囲気中の水分の影響を排除するために、真空3D-SFMの開発を行った。しかし、真空ポンプによるノイズが当初の想定よりも大きく、原子・分子分解能計測に不向きであることが分かった。現在は、機械的な振動を極力排除するために、不活性ガス循環生成装置付きグローブボックスと3D-SFMを組み合わせた環境制御型3D-SFMの開発を行っている。その一方で、IL/固体界面の3D-SFM計測において、これまで考慮されてこなかった探針電荷の影響を調査するため、探針電位と基板(電極)電位を同時に制御しながら電気化学3D-SFM(EC-3D-SFM)計測を実施した。これにより、探針電位(電荷)の符号に依存してEC-3D-SFMから得られる3次元力分布が異なることを発見し、その起源を明らかにすることで、EC-3D-SFMを用いたIL/固体界面計測手法の確立に成功した。さらに、確立した計測手法を用いて、4種類のILと金(111)電極界面のEC-3D-SFM計測を実施し、IL種により界面構造が異なることを示唆するデータの取得に成功した。特に、単価のILであるDEME-TFSIにおいては、このILを用いて作製した電気二重層キャパシタのデバイス特性とDEME-TFSI/金電極界面のナノ構造に相関があることを示す結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3D-SFMを用いたIL/固体界面の計測手法の確立には成功しており、この技術を用いて4つのILと金電極界面の構造観察を達成した。うち1つのIL種において、3D-SFMで明らかにした界面構造から電気二重層キャパシタのデバイス特性の発現機構の解明にも成功し、ILを用いた界面デバイスの評価に3D-SFMが有用であることを示した。また、最終目標である電気二重層トランジスタ(EDLT)においては、分子レベルの観察が可能なEDLT基板の作製に苦戦しているが、これは当初より想定されていた苦労である。一方で、当初計画していなかったEDLCのデバイス特性の発現機構の解明はこの分野において重要な発見であり、その点はむしろ予定外の成果が得られている。総合して考えると、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
技術開発については、グローブボックスを用いた環境制御型3D-SFMの開発と3D-SFMの計測条件を満たすEDLT基板の作成方法の確立を行う。応用においては、モデル系であるEDLCのデバイス特性のIL依存性を3D-SFM計測による解明を目指す。その後、最終目的であるEDLT基板/IL界面の3D-SFM計測を実施し、EDLTデバイス機能と界面構造の比較を行う。
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