研究実績の概要 |
本研究では二元水素化物超伝導体の探索範囲を超え、機械学習を用いて三元水素化物超伝導体を見つけ出し、より高い転移温度を実現することだった。蓄積した結晶化学の知識と自分で開発したフィジビリティアプローチを活用し、新しい超伝導体の探索を目指した。博士課程では、まず機械学習モデルの構築に成功し、その予測性能を確認した。このモデルに基づき、La-Y-H, Y-Mg-H, Mg-Sc-H, La/Y-Ce-H体系で潜在的な超伝導性を持つ水素化物の存在を理論上で予測した。La-Y-HとLa/Y-Ce-H体系は後の実験でその存在が確認され、理論予測と実験的検証の一致が示された。最終年度、Thなどのアクチノイド系金属が安定な三元水素化物を形成可能であることも探究した。特にThとLaを含む三元クラスレート水素化物の超伝導性質に焦点を当て、高圧下で安定な三元水素化物が形成可能であることを理論的に証明した。進化アルゴリズム、第一原理計算、強結合Eliashberg法を組み合わせた分析は、超伝導メカニズムへの深い理解と未来の超伝導材料の設計への新たなアプローチを提供した。特に、200 GPaでの(La,Th)H10が高い超伝導転移温度を持つ潜在的な超伝導体であることが示された。進化アルゴリズムと第一原理計算の組み合わせは、超伝導性質の探索における計算手法の有効性を示し、Eliashberg法による分析は、超伝導メカニズムの深い理解に貢献している。これにより未来の超伝導材料の設計と発見に向けた新たな道が開かれる。この研究は、超伝導材料の理論的探索と実験的検証をつなぐ橋渡しとなり、高圧下での超伝導体の開発と応用に新たな可能性を示している。計算科学と実験科学の相乗効果により、超伝導材料研究の新しい地平が切り開かれることが期待される。
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