研究課題/領域番号 |
22KJ1491
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補助金の研究課題番号 |
21J21859 (2021-2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2021-2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分63010:環境動態解析関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
市川 雄貴 信州大学, 総合医理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
2023年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2022年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2021年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
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キーワード | 富栄養化 / 諏訪湖 / リン / 鉄 / 水質改善 / アルカリホスファターゼ / 植物プランクトン / 湖沼 / 水質浄化 / ホスファターゼ |
研究開始時の研究の概要 |
富栄養化した浅い湖沼は、リンや窒素といった栄養塩の外部負荷量を削減しても、湖沼が水質改善されるまで10年以上かかるとされている.これはそれまでの過程で内部に蓄積した栄養塩が湖沼へ放出され、浅い湖沼ではその影響が全体へ波及しやすいためである.長野県の諏訪湖はかつて強烈な富栄養化が発生したが、下水道整備等にとるリン流入量の削減に伴って水質浄化が比較的速やかに進んだ湖沼である. 本研究では現在の諏訪湖におけるリン動態を詳細に調査するとともに、これまで蓄積されていた諏訪湖の観測データと合わせて、諏訪湖の水質浄化の仕組みを解明することで、他湖沼の水質管理に役立てる知見を得たい.
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研究実績の概要 |
浅い湖では、貧酸素化などによって促進される底質から湖水へのリン内部負荷のため、リンの外部負荷を削減しても水質改善が進みにくい時がある。諏訪湖は最大水深が6m程の浅い湖であるが、リン外部負荷の削減に伴い水中リン濃度が大きく低下し、植物プランクトン量も減少した。さらに、植物プランクトンの優占種も藍藻類から緑藻類・珪藻類へ変化している。諏訪湖におけるリン動態の解明は浅い湖の水質管理に有用な知見になると考え、水・底質中のリン・鉄濃度などを測定し、諏訪湖が過栄養状態であった1970年代と比較した。 1970年代の諏訪湖では貧酸素期に底質から放出されたリンが湖表層まで届いていたが、2020年前後の諏訪湖の貧酸素期ではリンが湖底層に留められていた。原因として、底質中リン濃度が減少したことに伴う底質からのリン放出速度の低下、温暖化による水温成層の強化に伴う湖水混合の抑制、湖水中の鉄が底質からのリン内部供給を妨害する「Fe-Pサイクル」の形成が考えられた。 また、近年の諏訪湖における植物プランクトンのリン獲得様式を解明するために、有機リンの分解酵素であるアルカリホスファターゼ(AP)の湖水中での活性を測定した。湖水を分画しAPの活性を測定した結果、諏訪湖では、リンがより豊富な他の水域と比べて、植物プランクトンのAP生産が高まっていることが判明した。これは上記の、底質から湖表層へのリン供給の低減によって、植物プランクトンが直接利用できる無機リンが減少し、有機リンもリン資源として利用していることが原因と考えられた。さらに、近年の諏訪湖における優占種である珪藻類や緑藻類はリン濃度に応じてAPを生産することが示された。かつての優占種であった藍藻類はAPをあまり生産しないと言われており、諏訪湖における植物プランクトン種の変化にリン濃度や組成が大きく関わっていることが示唆された。
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