研究課題/領域番号 |
22KJ1507
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補助金の研究課題番号 |
21J00041 (2021-2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2021-2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
池谷 聡 名古屋大学, 高等研究院(工), 特任助教
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | トポロジカル超伝導体 / 超伝導接合系 / 量子輸送現象 / 輸送現象 |
研究開始時の研究の概要 |
2010年代に入り勃興したトポロジカル超伝導体の研究におけるこれまでの主題は、トポロジーという「数学的」概念を駆使した「物質の分類・探索」であった。本研究では、トポロジカル超伝導体の研究を、「物理学」の分野として更に発展させ、また将来のデバイスへ応用される可能性を高めるために、トポロジカル超伝導体がメゾスコピック系で示す特異な「物理現象の探索・解明」を行う。特に、高次トポロジカル超伝導体とトポロジカル・ジョセフソン接合という、近年注目を集めているトポロジカル超伝導体に焦点を当て、多端子接合系における電流・電流ゆらぎ・熱流の理論解析を通じて、それぞれの系の個性を捉えた新奇な物理現象を探索する。
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研究実績の概要 |
令和4年度前半には、軌道間超伝導と呼ばれる新奇な状態が発現している可能性が指摘され、注目を集めているルテネイト超伝導体に関する研究に取り組んだ。具体的には、ルテネイトにおける軌道間超伝導を記述する典型的な理論模型を用いて、試料表面に現れるアンドレーエフ準粒子状態の性質を解析した。そして、それらのアンドレーエフ準粒子状態が本質的に不純物擾乱に対して極めて脆弱であることを指摘した。現在は本研究を発展させ、多自由度超伝導体に発現し得る荷電アンドレーエフ準粒子状態に起因する多端子熱電効果に関する研究に着手している。 令和4年度後半には、近年注目を集めているボゴリューボフ・フェルミ面をもつ超伝導体に関する電流ゆらぎの研究を行った。特に、半導体/超伝導体ヘテロ構造に現れるボゴリューボフ・フェルミ面を実験的に検出する方法を理論的に提案した。今後は、ボゴリューボフ・フェルミ面が存在する多端子系電気伝導現象を解析し、ボゴリューボフ準粒子間の量子干渉に起因する新奇な物理現象を探索することを計画している。 また、スピン3重項超伝導体のペア対称性を識別するための、多端子系における電流ゆらぎに着目した実験を理論的に提案した。提案した実験は、ノイズ-シグナル比の発散の有無だけによって、ペア対称性を決定的に識別可能にするYes/No実験であり、近年注目を集めているCoSi2/TiSi2ヘテロ構造の研究に応用できると考えている。 さらに、1次元トポロジカル超伝導体を用いた3端子ジョセフソン接合における多端子電気伝導現象を解析した。その結果、波動関数が空間的に離れた二箇所で大きな振幅を持つ特異なマヨラナ状態が発現すること、そして、そのマヨラナ状態に起因した新奇な非局所電気伝導現象が発現することを理論的に明らかにした。本研究は、将来的に、トポロジカル量子計算機における量子ビットの検証に応用できると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度の研究により、超伝導体を含む多端子接合系における新奇な輸送現象を理論的に予言した。より具体的には、(1)2次元スピン3重項超伝導体を含む三端子接合系における表面を周回するマヨラナ準粒子に起因する非局所電流に関するノイズ-シグナル比の発散、(2)1次元トポロジカル超伝導体を含む3端子ジョセフソン接合系における非局所型のマヨラナ準粒子に起因する新奇な非局所コンダクタンス量子化現象を理論的に解明した。現在、これらの研究に関する論文を欧文誌への投稿にむけて執筆中である。 さらに令和4年度には、多自由度超伝導体における特異な荷電アンドレーエフ束縛状態の存在の予言、や半導体/超伝導体ヘテロ構造におけるボゴリューボフ・フェルミ面の性質の解明などを行った。これらの研究は、計3編の論文にまとめられ、すでに欧文誌に掲載されている。また令和5年度には、荷電アンドレーエフ束縛状態に関する研究は多端子系における熱電効果の研究に、ボゴリューボフ・フェルミ面の研究はボゴリューボフ・フェルミ面を介した非局所電流相関の研究に発展すると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度にはまず、非局所型マヨラナ準粒子に起因する新奇な非局所コンダクタンス量子化現象の研究を発展させる。令和4年度には、1次元トポロジカル超伝導体を含む3端子ジョセフソン接合系においてこの現象を予言したが、このアイデアは、高次トポロジカル超伝導体、超伝導化ノーダル半金属、トポロジカルジョセフソン接合系に拡張することができる。また、令和4年度には、非局所型マヨラナ準粒子が関与した微分コンダクタンス・電流ノイズの異常のみを研究したが、令和5年度には、非局所型マヨラナ準粒子が介したジョセフソン効果の研究にも着手する。ジョセフソン効果の研究は、近年注目を集めているクーパ・カルテットと関連すると期待している。 また、令和4年度の研究を土台として、令和5年度には、多自由度超伝導体に現れる荷電アンドレーエフ束縛状態を介した多端子熱電効果の研究や、半導体/超伝導体ヘテロ構造におけるボゴリューボフ・フェルミ面を介した非局所電流相関の研究にも取り組む。
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