研究課題
特別研究員奨励費
本研究は大型有蹄類であるヌーの大移動における個体の意思決定メカニズムの解明を目指していたが、コロナウィルス感染拡大の影響で、計画の大幅な変更を余儀なくされた。代替プロジェクトとして、ウマの群れの遊動における意思決定メカニズムを掲げる。これは、対象種とサイトスケールこそ異なるものの、基本的には類似した方法で研究を行うことができる。また、ウマをはじめとした大型哺乳類の群れにおける個体ー群れの階層性を明確にした上で、その移動メカニズムを解明できた研究例はない。本研究では、2020年以前に収集していた野生ウマの行動データを解析することでこの課題に挑む。
本研究はタンザニアに生息するヌーの群れの移動経路選択における個体間相互作用を解明する計画だった。空撮データを用いて自動トラッキングを行い、経路選択における統計モデルを構築し、他個体の進路選択が自身の経路選択に与える影響を解明する予定であった。新型コロナウィルスの影響により、研究開始年度および次年度の渡航が中止となり、計画を変更した。主に空撮動画を対象にしたトラッキング手法の開発に舵を切り、日本に生息する野生のサル・ウマを対象に研究を行った。今年度はウマを対象に群間の相互作用を対象に、自群と他群の境界認識についての研究をおこなった。ウマは繁殖期になると複巣の群れが集まる性質を持っており、ときには非常に近い距離に複数群が同居する。しかし、空間的に群れ同士が混じり合うことはほとんどない。この特徴について、群れ同士が混じり合わないことを定量的に示し、またその空間的境界をどのように認識しているのかについて研究をおこなった。群れの外形を複数の方法で定義し、その外形が重なるかどうか検証したところ、やはりほとんど外形は重なることはなかった。しかし、一部の群れでは他の群れ間と比べて有意に重なる頻度が高く、群れ間関係における構造が存在することが示唆された。これは重層社会を形成すると言われているウマの群れにおいて、霊長類のような群れ間にも関係性に強度があること空間的位置関係を用いた研究から示した。並行して当初予定していたアフリカでの調査地の再開拓もおこなった。南アフリカのクルーガー国立公園を訪問し、ドローンを用いた空撮の可能性やデータ収集の効率性を確認した。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
Journal of Zoology
巻: 321 号: 2 ページ: 113-127
10.1111/jzo.13100
PLoS ONE
巻: 17 号: 7 ページ: e0271535-e0271535
10.1371/journal.pone.0271535