研究課題/領域番号 |
22KJ1516
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補助金の研究課題番号 |
21J01817 (2021-2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2021-2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分15020:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する実験
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小林 雅俊 名古屋大学, 素粒子宇宙起源研究所, 特任助教
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 暗黒物質 / キセノン / 低放射能技術 / トリチウム |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では大型液体キセノン検出器XENONnTを用い、我々の宇宙に存在する未知の質量である暗黒物質を発見することを目指す。XENONnT実験は2022年度に初期観測データを用いた解析結果を公表した後、更なるバックグラウンド低減を経て観測が継続されており、本データを解析して暗黒物質探索を行う。また更なる将来実験へ向けたR&Dにも取り組んでいく。
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研究実績の概要 |
本研究では、宇宙に存在する未知の質量である暗黒物質の直接的な発見を目的とする。報告者はその達成のため、イタリア・グランサッソ研究所で行われる大型キセノン検出器を用いた暗黒物質の直接探索実験XENONnTに参加し、本年度は主としてXENONnT検出器のデータ解析に取り組んだ。XENONnT実験では2021年7月から12月にかけて取得した初期観測データを用いた低エネルギー電子反跳事象に関するデータ解析の結果が本年度7月に発表しており、報告者はそのうち主としてキセノン中の不純物濃度の継時変化による、信号減衰量の推定などに取り組むことでシミュレーションの改善とエネルギー分解能の向上に貢献した。本結果では、前身のXENON1T実験におけるバックグラウンド信号を1/5まで低減することに成功し、同実験で報告された低エネルギー部における超過事象を検証した。データ解析の結果、XENONnT実験では同様の超過が観測されなかったことから、太陽アクシオン、ニュートリノの異常磁気モーメント、ダークフォトンなどの新物理や電子と弱く結合する暗黒物質モデルに関して世界で最も強い制限を与えることに成功し、PRL誌に論文として発表した。本結果から、XENON1T実験における超過は当時も議論されていた微量トリチウムによる影響と考えられている。また、同データを用いたWIMP暗黒物質に関する解析結果も本年度3月に発表しており、WIMPの兆候は観測されなかったもののXENON1T実験による制限値を更新することに成功している。WIMP解析に関する結果は、現在論文として投稿準備中となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
XENONnT実験はCOVIDによる影響を受け、実験開始は遅れたものの順調にデータ取得を継続しており、報告者も貢献したデータ解析により初期観測の成果を発表している。また最も重要な課題の一つであった前身実験のXENON1T実験で観測された超過事象に関する検証を非常に明確に行い、いくつかの新物理モデルに関しては世界で最も良い制限をつけることに成功したため。
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今後の研究の推進方策 |
XENONnT実験は、同種の実験において世界で最も低い放射性バックグラウンドでのデータの取得を続けている。本データを用いたより感度の高い暗黒物質探索を続けるとともに、本年度の成果から、暗黒物質だけでなく低エネルギー部における新たな観測として数keV領域における低エネルギー太陽ニュートリノの世界初観測も目標となる。
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