研究課題/領域番号 |
22KJ1521
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補助金の研究課題番号 |
21J21236 (2021-2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2021-2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小島 慶太 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
2023年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2022年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2021年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
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キーワード | 量体化 / 短距離秩序 / 局所構造解析 |
研究開始時の研究の概要 |
結晶中で金属元素が分子を形成する量体化現象を示す系において、従来、量体化現象が起きていないとされる温度域においても局所的に分子形成が生じていることが明らかになりつつある。層状LiVS2は低温で量体化を示すため、高温の局所状態に着目して研究したところ、ジグザグ鎖状の局所分子形成が生じ、さらに秒のオーダーで揺らぐダイナミクスを示すことを見出した。これは既存の系にはない特徴であり、本研究はLiVS2が示すダイナミクスの起源解明を目指す。
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研究実績の概要 |
当該年度はLi欠損体と母体LiVS2について局所構造の調査を実施した。SPring-8 BL04B2において複数の試料に対し局所構造解析に必要なデータの取得を行い、解析を実施した。その結果、Li欠損体においても局所歪みが認められ、Li量に対応した電子状態と合わせて局所歪み状態について考察した。 また次年度予定している集光X線を用いたX線吸収測定(XAFS)、X線回折実験の他、非弾性X線散乱実験について予備実験を実施した。 集光X線吸収測定は、試料の取り付け法、試料温度の変化、大気非暴露であることの確認、高輝度なX線照射による試料ダメージについて確認した。前者3つは当初の想定通り問題が無かったものの、X線を集光することにより、試料が徐々に脆くなることが明らかになった。また、おそらく装置系に由来した振動が観測されたため、その原因と対策について検証を行った。 集光X線回折実験は、予備実験の結果、試料位置を観察するためのCCDカメラの配置を修正する必要があることが明らかになった。また我々が準備したヒーターの取り付けを行うためには、試料位置を調整するステージを撤去する必要があることが明らかになった。そのため、試料位置の調整を可能にしつつ、ヒーターを取り付けられるステージを構築した。 非弾性X線散乱測定においては、試料の水和対策のために取り付けたガラスカバーが実験データのクオリティ意を著しく低下させることが明らかになった。ガラスより散乱が弱い有機フィルムを用いて再実験を実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初想定していた、本年度までのLixVS2(0<x<1)の平均構造、局所構造の調査について、代表的なxにおける実験及び各種解析が完了しており、本年度までの予定を完遂している。とくにx=0.5の系においては母体であるLiVS2に現れる量体化分子形成パターンと非常に似通った量体化分子形成が生じている一方で、電子状態の違いによる基底状態の変化が現れていることから、LiVS2におけるダイナミクス発現メカニズムの解明に重要な物質となることが推測された。またx=0の系では今日まで考えられていた低温基底状態の構造の基本骨格が異なることが明らかになった。 また、本年度については次年度実施予定の各種実験について予備実験を実施した。予備実験の結果、試料位置の調整や装置系由来の振動、大気非暴露下での高精度なデータの取得のために必要な事項等、問題点が多数浮上した。それらについては担当者と協議を重ねることで問題点をおおむね解決できており、次年度以降の実施に支障はなくなった。 上記の理由により進捗区分はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は当初の予定通り、ナノ集光されたX線による時分割実験の実施と対応する物性測定を実施する。 時分割実験に関してはすでに予備実験を含めた準備や問題点の洗い出しは完了しており実施に支障はない。本実験によって本研究課題の最終目的に定めるダイナミクスのメカニズム解明は飛躍的に進む。関連して他大学の研究室と共同でLiVS2の光電子分光測定を実施することになった。これによってLiVS2におけるバンドを観測することができ、ダイナミクス状態という理論計算ではサポートできない電子状態についても明らかになる。 また物性測定についてはx=0を除くLixVS2系で初となる単結晶を用いた実験が可能である。大気非暴露下で実施する必要があるというハードルはあるものの、対策法については複数の方法による目途が立っており、それらが大気非暴露を保持できるのかについて、今後の回折実験によって調査する。本実験によってダイナミクス状態が物性に及ぼす影響を評価するとともに、ダイナミクスを発現することに由来した機能という観点からも物性を評価する。
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