研究課題/領域番号 |
22KJ1523
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補助金の研究課題番号 |
21J21725 (2021-2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2021-2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分13040:生物物理、化学物理およびソフトマターの物理関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
仲井 文明 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
2023年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2022年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2021年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
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キーワード | 粉体 / シミュレーション / 確率過程 / ダイナミクス / 統計力学 / 拡散 / ブラウン運動 |
研究開始時の研究の概要 |
棒状の粉体粒子からなる流体のダイナミクスを、粒子同士の衝突に基づいて理解することを目指す。衝突を不定性なく定義できるシミュレーション手法を用いて、構成粒子の衝突の時間間隔や衝突による速度・角速度の変化の分布といった衝突の統計を調べる。得られた衝突の統計を分子運動論の手法を応用することで理論的に記述する。次に、得られた衝突の統計に対して確率過程の方法を適用することで構成粒子の運動の時間相関関数の記述を試みる。
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研究実績の概要 |
衝突の統計に基づいて,棒状粉体により構成される流体のタイナミクスを理論的に記述することを目指している.2022年度は単純な系として,散逸がない球状粒子・棒状粒子の運動のシミュレーション・理論解析を実施した.以下の解析において,2021年度,2022年度に購入したワークステーションを用いた. 2021年度に見出した,球状粒子がある条件下において非ガウスな通常拡散を示す現象に対して理論的な解釈を与えた.すなわち,ある条件下において,球状粒子の速度の方向と速さが変化する時間スケールに隔たりが生じる状況があり,この時間スケールの分離が拡散性の揺らぎを発現していることを見出した.併せて,障害物とその中を運動する球状粒子により構成されるLorentz気体と呼ばれる理論モデルに基づいて,発見した揺らぐ拡散性の理論解析を実施した. 2021年度に解析した,棒状粒子の拡散性が周囲流体の密度の増大に伴って上昇する現象を理解するために,棒状粒子の衝突統計を理論的に導出して動的Monte Carlo法と呼ばれる確率的シミュレーションアルゴリズムを構築した.このシミュレーションを用いて,棒状粒子の重心拡散係数・回転拡散係数,軌跡等を詳細に解析した結果,棒状粒子の拡散性の上昇は棒状粒子と周囲流体粒子の衝突頻度と平均の速度・角速度だけで説明できることが分かった. これらの結果をまとめて 論文を国際誌に4本投稿し,内2本は既に受理された.学会発表は国際学会2件と国内学会を5件実施した.国際学会2件と国内学会3件で発表賞を頂いた.併せて上記の結果について,2023年度の国際学会2件で発表予定(受理済み)である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2022年度は,2021年度に発見した球状粒子及び棒状粒子流体の2つの興味深い物理現象のシミュレーション・理論解析を実施し,双方の物理的なメカニズムについて明らかにすることができた. 球状粒子については,ある条件下において構成粒子が非ガウスな通常拡散を示す現象に対して理論的な解釈を与えた.すなわち,球状粒子の速度の方向と速さが変化する時間スケールに隔たりが生じる状況があり,この時間スケールの分離が拡散性の揺らぎを発現していることを見出した.併せて,障害物とその中を運動する球状粒子により構成されるLorentz気体と呼ばれる理論モデルに基づいて,発見した揺らぐ拡散性の理論解析を実施した. 棒状粒子については,粒子の拡散係数が周囲流体の密度の増大に伴って上昇する現象を理解するために,棒状粒子の衝突統計を理論的に導出して動的Monte Carlo法と呼ばれる確率的シミュレーションアルゴリズムを構築した.このシミュレーションを用いて,棒状粒子の重心拡散係数・回転拡散係数,軌跡等を詳細に解析した結果,棒状粒子の拡散性の上昇は棒状粒子と周囲流体粒子の衝突頻度と平均の速度・角速度だけで説明できることが分かった. これら成果について,論文を国際誌に4本投稿し,内2本は既に受理された.学会発表は7件実施して4件発表賞を獲得した. 2022年度に構築した棒状粒子のシミュレーション及び理論解析の枠組みは,今年度からモデリング・理論解析する棒状粉体の研究において基盤的役割を果たす. 以上のように,シミュレーション・理論的な基盤を構築できた点及び,複数の論文と学会発表のアウトプットを鑑みて,本年度の進捗は当初の計画以上に進展しているものと評価した.
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今後の研究の推進方策 |
研究課題遂行及び.2021年度・2022に研究した球状粒子・棒状粒子の新規現象2種の理論的解明を目指す.具体的には以下の3つを実施する. 1.2022年度に構築した棒状粒子のシミュレーションにエネルギー散逸の効果を導入することで,棒状粉体を扱えるように拡張する.構築したシミュレーション手法に基づいて,2021年度・2022年度に購入したワークステーションを用いて棒状粒子の運動を計算する.具体的には,棒状粒子の拡散係数や方向の相関関数,位置の分布関数等の相関関数を計算する.得られた結果を衝突統計の観点から理論的に理解することを目指す. 2.2022年度に,棒状粒子の拡散係数の周囲流体密度に対する非単調性の理論解析を精緻化する.具体的には,棒状粒子系のBoltzmann方程式を導出して,変数の分布関数の時間発展を理論解析する.一般に,このような理論解析は容易でなく,棒のアスペクト比が無限の極限や時間スケール無限の極限等の限定的な解析になる可能性がある. 3.2022年度に実施した,球状粒子の揺らぐ拡散性のLorentz気体に基づく理論解析を精緻化する.具体的には,二成分気体のBoltzmann方程式から,軽い粒子の位置の分布関数を導出する.分布関数の理論解析が容易でない場合には,分布関数の高次モーメントに相当する非ガウス性パラメータ等の物理量の解析を実施する. 得られた成果についてそれぞれ学会と論文で発表する.
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