研究課題/領域番号 |
22KJ1543
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補助金の研究課題番号 |
22J00300 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分13040:生物物理、化学物理およびソフトマターの物理関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
石田 崇人 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 高分子劣化 / 粗視化分子動力学 / 自動酸化 / 空間不均一性 / マルチスケール |
研究開始時の研究の概要 |
高分子材料の劣化はミクロな化学反応が蓄積し,最終的にはマクロな材料物性の低下に至るスケールを横断した現象である.当研究課題では,劣化に伴う分子鎖形態変化を含むメソスケールの粗視化分子運動モデリングを中心に,ミクロスケールの反応速度モデル及びマクロスケールの拡散シミュレータと連成することで「マルチスケール劣化シミュレーション基盤の構築」を目的とする.実際の劣化作用を受ける高分子材料に適用し,劣化に伴うマクロ物性(力学特性,粘弾性,熱物性)の変化を再現できる劣化予測技術へ昇華することを目指す.
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研究実績の概要 |
当該研究課題「高分子劣化のマルチスケールシミュレーション: 分子ダイナミクスから物性変化まで」に関して,当初の研究遂行計画に対して非常に順調に進展している.これまでに,マルチスケールシミュレーションの根幹を成すメソスケールダイナミクスを表現する粗視化分子動力学に関して,長時間ダイナミクスの計算に実績のある粗視化Kremer-Grestモデル上で高分子劣化を表現することができるよう拡張することに成功した.具体的には,高分子劣化のミクロな反応速度論で得られている各種反応時定数に即して,高分子鎖の切断や架橋といった形態変化の素過程を適宜挿入することによって高分子劣化のメソスケールシミュレーションを実現させることができた.高分子の主要な劣化機構はラジカルを介した酸化劣化であり,その反応機構に複数の分子間反応が含まれることから,酸化劣化は本質的に空間的に不均一な現象であると考えられている.本研究でも,切断サイトの空間不均一性を確認することができた,さらには,その程度は劣化反応速度と分子運動の時間スケールのバランスから決定づけられていることを明らかにした.今後はその不均一構造を如何に定量的に評価するかに関して検討を進めていく.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
粗視化分子動力学法の枠組みの中で素性がよく知られており,高分子メルトの動的な特性をよく表現することが知られる粗視化Kremer-Grestモデルをベースとして,そこに高分子劣化の反応過程を取り込むというアプローチを取った.この方法は反応機構及び各種時定数をシミュレーションのインプットパラメータとして用意する必要があり,ここではポリプロピレン熱劣化の反応ダイナミクスを記述することに成功した先行研究(E. Richaud, F. Farcas, P. Bartoloméo, B. Fayolle, L. Audouin, J. Verdu, Polym. Degrad. Stab., 2006)のパラメータを参考にした.そのようにして構築されたシミュレーションの化学反応ダイナミクスはポリプロピレン熱劣化でよく知られる自己触媒的な振る舞いを定性的に再現することができており,その反応速度は分子運動のタイムスケール及び周囲の劣化進行度合いによって定数倍程度変化することがわかった.また,ラジカルを介して起こる自動酸化反応機構に複数の分子間反応が含まれることから,酸化劣化は本質的に空間的に不均一な現象であると考えられている.本研究でも,切断サイトの空間不均一性を確認することができた,さらには,その程度は劣化反応速度と分子運動の時間スケールのバランスから決定づけられていることを明らかにした.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの検討から,高分子劣化に伴って起こる分子鎖切断サイトの空間分布が不均一になる場合があることを明らかにした.具体的には,高分子鎖の最長緩和時間の数倍程度以下の時間スケールでは,劣化反応が局所的に進行することによって劣化サイトの空間分布に不均一性が現れることが明らかになった.今後は,高分子鎖の最長緩和時間と劣化化学反応の特徴的な時間のバランスを系統的に振りながら,立ち現れる不均一構造を評価する.不均一構造を数量的に評価する方法は現在模索中であり,静的構造因子を用いることが有効であれば,それを用いる.もし,静的構造因子が有効でない非周期的な不均一構造なのであれば,トポロジカルデータ解析の手法であるパーシステントホモロジーを用いた構造の評価を行う予定である.
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