研究実績の概要 |
本研究は,大規模量子系の実現可能性の指標を与えることを最終的な目標としており,状態識別性能の系を拡大したときの漸近挙動の解析が重要な課題であった.しかし,この課題の解決に必要だった先行研究「一般化されたSteinの補題」の証明にギャップがあることが課題期間中に指摘され,より基本的な「状態識別性能の様々な数理モデルや系の拡大における挙動」を解析することから行う必要があった. 最終年度は,主に以下の4つの研究に従事した.1. 一般確率論における超量子性の検出.2. 状態識別性能による数理モデルの特徴づけ.3. 一般的な数理モデルにおける状態識別性能の漸近挙動.4. 一般化されたSteinの補題の部分的解決と量子系実現可能性の指標への応用.研究1,2,3はすでに論文としてまとめ,査読付き論文誌Physical Review A(研究1,3)およびNew Journal of Physics(研究2)に投稿しており,研究2はすでに受理内定である.また,研究1は国内会議量子技術研究会48および国際会議Asia Quantum Information Science 2023にて,研究2は国内会議量子情報技術研究会49および国際会議Quantum Information Processing 2024にて,それぞれ成果報告している.研究4は本研究の最終的な目標であったが,採択期間中には完全には解決できず,現在も引き続き研究を行っている. 当初計画よりも状態識別性能の解析を重点的に行う必要があったが,その分,様々な数理モデルにおける状態識別性能に関する重要な成果を得ることができ,すでに3本の論文が査読付き論文誌に受理され,国内外での多くの成果報告を行った.研究2については招待講演も行い,分野の研究者に注目される重要な成果を出せた.これらは本研究の将来的目標遂行への足掛かりとなった.
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