研究課題/領域番号 |
22KJ1595
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補助金の研究課題番号 |
22J20884 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分38030:応用生物化学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
雨宮 優奈 名古屋大学, 生命農学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
2024年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | mTORC1 / Calcium / Calmodulin / TSC2 / Rheb / mTORC2 / Rictor / mSin1 / mTORC1 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、Ca2+シグナル異常により発症する病的心肥大などが細胞の大きさ制御を担うmTORというキナーゼを中心とした経路の異常と関連することが報告されている。そこで本研究ではCa2+シグナルによるmTOR経路制御を理解するために、Ca2+結合タンパク質であるCaMを介したmTOR経路への影響を分子レベルで明らかにする。このことにより、関連疾患の発症メカニズムの解明、治療法の開発に貢献することを目指す。
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研究実績の概要 |
報告者らは、動物細胞へのアミノ酸投与が細胞内Ca2+濃度の上昇を引き起こし、Ca2+結合タンパク質であるcalmodulin(CaM)を介してmTORC1を正に制御すること、またmTORC1経路の負の制御因子であるTSC2(tuberous sclerosis complex 2)とCaMがCa2+依存的に結合することを報告してきた。そこで、CaMがTSC2を介しmTORC1の活性を制御する分子機構の解明を通じ、mTORC1の異常活性を伴う種々の病態発症の分子基盤の解明や、治療法開発に貢献することを目指している。昨年度は、ルシフェラーゼ断片の再会合による発光を利用した手法でTSC2-Rheb間の結合を検出し、大腸菌由来精製CaMの添加がその結合を低下させることを明らかにした。そこで令和5年度も同様の系においてTSC2のCaM結合領域欠失変異体を用い、CaM添加によるRhebとの結合低下への影響を評価した。その結果TSC2変異体では野生型TSC2と比較してCaM添加によるRhebへの結合低下に有意に耐性を示すことがわかった。このことからCaMはTSC2に結合することで、TSC2-Rheb間の結合の低下に寄与していると考えられる。また報告者らはCaMがmTORC2構成因子であるRictorと結合することも明らかにしているため、CaMによるmTORC2活性制御機構についても同時に検証した。PLA (近接ライゲーションアッセイ)によりmTORC2の主要構成因子間の相互作用に細胞内Ca2+キレート剤やCaM阻害剤が与える影響について評価した。その結果、Ca2+キレート剤やCaM阻害剤によりmTORC2構成因子であるRictorとmSin1との相互作用が低下することが明らかになった。このことから、CaMはmTORC2複合体形成を変化させ、mTORC2活性を調節していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度はルシフェラーゼ断片のの再会合による発光を利用した手法でTSC2-Rheb間の結合を評価し、CaMの添加がCa2+依存的にTSC2-Rheb間の結合を低下させることを明らかにしてきた。そこで令和5年度は、報告者らがこれまでに同定したCaM結合領域を欠失させたTSC2変異体を同実験系に供することで、CaMのTSC2への結合が、TSC2とRhebとの結合低下に寄与するかどうかを確認した。その結果TSC2変異体では野生型TSC2と比較してCaM添加によるRhebとの結合低下に有意に耐性を示すことがわかった。 また、CaMによるRictorを介したmTORC2活性制御機構について、令和5年度はCa2+/CaMがmTORC2複合体形成に与える影響をPLA(近接ライゲーションアッセイ)を用いて評価した。その結果細胞内Ca2+キレート剤や、CaM阻害剤処理によって、mTORC2の主要構成要素であるRictorとmSin1との近接が低下することが明らかになった。このことから、Ca2+/CaMはmTORC2複合体形成を変化させてmTORC2活性を調節している可能性が示唆された。このようにmTORC1/2両経路におけるCa2+/CaMの役割の分子メカニズムレベルまで迫ることができたことから、研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
申請者は既にTSC2のCaM結合領域について同定し、その結合最小領域TSC2断片の過剰発現によってmTORC1活性を調節可能だということを見出している。そこで令和6年度はRictor結合最小領域についても同定し、同様にmTORC2活性を調節することが可能か、また細胞増殖や生存への影響を検証する。これらTSC2、Rictor断片はmTORの異常な活性化を起因とする疾患(がん、心臓病等)の治療薬(ペプチド医薬)としてのポテンシャルを高く持つと考えられるため、細胞膜透過性や安定性を高める特殊な修飾を施したこれらペプチドを合成し、細胞に取り込ませることでmTORC1、mTORC2両活性の調節が可能であるかについても検証する。またこれらペプチドと同様の効果を示す化合物を探索するため、深海エビ由来発光酵素Nanoluciferase(Nluc)を二つに分割した断片をCaMとTSC2やRictorのCaM結合最小領域断片にそれぞれ融合させ、両者の相互作用によって再会合したNlucによる発光を測定し、細胞内での結合を簡便に評価できる系を構築する。その後、化合物ライブラリー等を利用し、両者の結合を阻害する化合物を探索する。
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