研究課題/領域番号 |
22KJ1596
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補助金の研究課題番号 |
22J20963 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分30020:光工学および光量子科学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
嶺 颯太 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
2024年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2023年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2022年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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キーワード | テラヘルツ波 / 非線形光学 |
研究開始時の研究の概要 |
世界トップのダイナミックレンジや広帯域周波数可変性を有する光注入型テラヘルツパラメトリック発生器は、カスケードプロセスにより発生するテラヘルツ波が未だ有効利用されておらず、高出力化の余地がある。本研究では、カスケードプロセスを効果的に利用することで、従来は捨てていた励起光エネルギーを再利用し、テラヘルツ波発生効率を向上する。卓上サイズで既存のテラヘルツ光源を凌駕する高電界テラヘルツ波を発生し、分光器の大幅なダイナミックレンジ向上、テラヘルツ非線形光学への利用はじめ、これまでテラヘルツ波出力が足りず未開拓であった新分野まで応用範囲を拡大することを目的とする。
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研究実績の概要 |
我々が開発中の光注入型テラヘルツパラメトリック発生器(is-TPG)は、テーブルトップサイズにもかかわらず、巨大な自由電子レーザーを超える100 kWの高強度テラヘルツ波パルスを生成する。この装置は、単一周波数で発振しつつ、0.4から5.0 THzの広範囲にわたる周波数可変性を持つ。現在、is-TPGでは、強い励起光によって引き起こされるカスケードプロセスにより、高次ストークス光へのエネルギー流出が変換効率の向上における課題となっている。本研究は、高次ストークス光によって結晶が励起されることで生じるカスケードテラヘルツ波を結晶外部に取り出すことにより、is-TPGの励起光からテラヘルツ波への変換効率を向上させ、高電界テラヘルツ波の生成を目指すものである。
昨年度は、高強度の注入光の導入と励起光が結晶端面で全反射する手法を用いて、カスケードプロセスの発生位置を結晶の浅部にシフトすることで、初めてis-TPGからカスケードテラヘルツ波を観測した。今年度は、結晶内部でテラヘルツ波を増幅するために、励起光と注入光を同軸で非線形光学結晶に入射し、チェレンコフ位相整合法を利用するアプローチを採用した。この方法により、結晶前方で微弱なテラヘルツ波が種光として生成される。この微弱なテラヘルツ波は、テラヘルツパラメトリック発生において重要な角度位相整合条件とほぼ同じ角度で発生するため、結晶を伝播する過程でテラヘルツパラメトリック増幅が行われることが確認された。このプロセスにより、微弱なテラヘルツ波は約160倍に増幅されることが実証され、テラヘルツ波の高強度化に成功した。この新しい方式は、励起光と注入光を同軸に非線形光学結晶に入射するだけで、波長が可変であるにもかかわらず高強度なテラヘルツ波を生成できるため、従来のテラヘルツパラメトリック発生器に比べて非常に簡便なセットアップとなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度、高強度の注入光を使用してカスケードプロセスの発生位置を結晶の浅部にシフトさせる技術を導入した。この方法により、is-TPGからカスケードテラヘルツ波が初めて観測され、結晶内での光の反射と制御を利用することの効果を実証した。今年度は、テラヘルツ波の増幅に焦点を当てて研究を進めた。特に、非線形光学結晶に励起光と注入光を同軸で入射し、チェレンコフ位相整合法を利用する新しいアプローチを開発した。この方法では、結晶前方で微弱なテラヘルツ波が種光として発生し、この波は結晶を伝播する過程で自然と増幅される。具体的には、この微弱なテラヘルツ波が約160倍に増幅されることが実証され、これはテラヘルツ波の効率的な増幅を可能にした。さらに、新しい発生器の設計において、操作の簡便さも向上した。非線形光学結晶に対する光の入射が同軸であるため、従来のテラヘルツパラメトリック発生器に比べて、装置の設置や調整が容易になっている。この利点は、実用化を目指す上で非常に重要であり、幅広い応用が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
励起光と注入光を非線形光学結晶に同軸で入射する方式では、高強度の注入光が必要である。将来的に簡便なテラヘルツ波光源を実現させるために、連続光程度の強度でテラヘルツ波を生成するには、結晶内部の位相整合条件をさらに詳細に検討し、研究を進める必要がある。さらに、テラヘルツ波の発生効率を向上させるために、光学的配置を工夫してパラメトリック利得の集中化を試み、カスケードプロセスをより効果的に制御する研究を進める予定である。また、実験装置のスケールアップを行いつつ、他の研究機関との連携を模索し、この技術の実用化に向けた基盤を固めていく計画である。
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