研究課題/領域番号 |
22KJ1598
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補助金の研究課題番号 |
22J21948 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分16010:天文学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
萩本 将都 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
2024年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 宇宙再電離 / ミリ波・サブミリ波 / 銀河形成 / 星間物質 / デジタル分光計 / デジタル信号処理 / 遠方銀河 |
研究開始時の研究の概要 |
宇宙再電離を引き起こした電離光子がどのように銀河間空間へ脱出したのかを知るには、この時代の銀河内部の電離状態を統計的に調べる必要がある。近年、赤方偏移した静止系遠赤外線輝線のミリ波・サブミリ波観測がこの目的を達成する上で有効な手段であることが示されてきた。そこで本研究では、この先得られる膨大な銀河候補サンプルの迅速な赤方偏移同定に備えるべく、ミリ波・サブミリ波広帯域デジタル分光システムを北半球に構築する。また、電離光子の脱出に関連して局所的な星周囲の電離構造に着目し、光電離モデルと実際の観測結果の比較から星間物質の物理状態診断手法を確立する。
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研究実績の概要 |
本年度は、静止系遠赤外線輝線の[OIII] 88 umと[CII] 158 um輝線に加え、ダスト連続光の検出が報告されている赤方偏移8.3の銀河に対して、観測結果をより正しく再現できるように星間物質のパラメータを見直し、改めてモデル化を行った。その結果、この銀河における典型的な星間物質が、星間空間に一部剥き出しの電離領域を含むような電離構造を示す、という結論を得ることができた。また、最適なモデルから得られた電離領域の大きさに着目し、これまで天の川銀河で調べられてきた電離領域の進化段階との関係を調べた。その結果として、この銀河における典型的な電離領域は、形成初期のコンパクトなものに対応するという示唆を得ることができた。現在、これらをまとめた論文を執筆中である。また、本モデルを適用する対象の拡張に着手し、統計的なサンプルの構築を開始した。加えて、本モデルの適用先となりうる銀河に対して、新たにジェームズウェッブ宇宙望遠鏡で取得された観測データの解析に取り組み、静止系可視光輝線も含めたより発展的な星間物質モデルの作成に着手した。 また、広帯域デジタル分光システムの構築に向けて、本年度は、広帯域分光計の実験室での線形性評価に注力した。トータルパワーの線形性については、シミュレーションとの比較から、測定で得られた結果が分光計に搭載されているアナログーデジタル変換器の個性によるものである可能性を導いた。これは、将来的な非線形性補正につながる重要な示唆である。また、輝線の線形性に関する評価の結果から、本分光計が、校正の際に用いるような強度の大きな輝線と、遠方銀河からの微弱な輝線の両方を正しく検出できる性能を持つことを示すことができた。これらの結果について、宇宙電波懇談会2024シンポジウムにてポスター発表を行い、最優秀ポスター発表賞を受賞することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、星間物質のモデル化について、予定通り最初のケーススタディの結果をまとめ、その結果を国内の研究会で発表できた。また、最終年度に予定していた、本モデルの適用先の拡張にも取り組み始めることができ、その上での問題点も早期に発見できた。さらに、新たにジェームズウェッブ宇宙望遠鏡で取得されたデータ解析も開始し、新たな展開を見ることができた。一方で、広帯域のデジタル分光計の性能評価については、完了することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
まず、星間物質のモデル化については、ケーススタディとして行った結果をまとめた論文を今年度中に出版する。その後、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡の観測データの解析を進め、静止系可視光輝線と遠赤外線輝線の両方を考慮できるように、星間物質モデルの拡張に取り組む。また、広帯域デジタル分光計の性能評価については、上四半期の間で単体評価試験を終え、新型広帯域受信機との結合試験に進む。その中で、本分光計における新たなデジタル信号処理技術の方法論を確立する。また、単体での評価試験の結果については、6月に開かれる国際会議での口頭講演が決まっており、合わせて論文としても発表する予定である。
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