研究実績の概要 |
本年度はカーボンナノチューブ(CNT)に対して、P及びNドーピングを施したPN接合ダイオードの作製と評価を中心に取り組んだ。ドーピングに用いる分子でP型安定なものとして、200℃まで安定なP型ドーパントである1,4,5,8,9,11-hexaazatriphenylenehexacarbonitrile (HATCN)を用い、N型ドーパントには、水酸化カリウム(KOH)とクラウンエーテルの一種であるベンゾ-18-クラウン-6の複合塩(KOH/CE)を用いた。これらを用いてPN接合ダイオードを作製し、200℃で5時間加熱しても安定に動作することを確認した。具体的には、以下の手順によるデバイス作製プロセスを考案した。まず、カーボンナノチューブ薄膜トランジスタ(CNT-TFT)を作製した後にKOH/CEブタノール溶液をスピンコートすることでデバイス全体にN型ドーピングを施した後、大気中の酸素や水によるN型特性の劣化を防ぐため、デバイス全面をアルミナ膜で被覆した。続いて電極を含むデバイス半分のアルミナ膜を水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液でエッチングするとともにN型ドーパントを洗浄した後、HATCNアセトニトリル溶液をスピンコートしてPN接合ダイオードを作製した。ドーピングの濃度条件は様々なCNT-TFTを作製して条件検討を行った。作製したデバイスを200℃に加熱したホットプレート上でデバイスを30, 100, 300分加熱してデバイスのI-V特性を測定した結果、作製したダイオードは200℃で300分加熱した後においても整流特性が得られ、温度耐性に優れたダイオードであることがわかった。
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