研究課題/領域番号 |
22KJ1615
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補助金の研究課題番号 |
22J23885 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分34010:無機・錯体化学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山梨 遼太朗 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,300千円 (直接経費: 2,300千円)
2024年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2023年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | アルミニウム / トリアルマン / 非対称ジアルマン / カテネーション / 直鎖状トリアルマン / オリゴアルマン |
研究開始時の研究の概要 |
同一元素が単結合を介して直鎖状に結合する性質はcatenationと呼ばれる。13族元素では元素間の単結合を形成する手段が少ないため、2つのAl原子が単結合で連結した化合物は数少なく、3つ以上のアルミニウム原子が単結合で直鎖状に連結した分子の報告例はない。本研究では求核性アルミニウムアニオンと求電子性アルミニウム反応剤との反応により、直鎖状トリアルマン種を合成することとした。得られるトリアルマン種と有機小分子との反応性や電気化学測定、量子化学計算の手法を用いて、連結したアルミニウム-アルミニウム共有結合の反応性の解明を行う。
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研究実績の概要 |
2022年度に得られた成果である3つのアルミニウム原子が共有結合を介して直鎖状に連結したトリアルマン化学種の性質を解明することを主とした研究を行った。トリアルマン化学種は求核性アルマニルアニオンとアルミニウム求電子剤との反応により得られ、アルミニウム求電子剤においてさまざま置換基を導入することで多様なトリアルマン化学種を合成可能であることを明らかとした。このような複数のアルミニウム原子が共有結合を介して直鎖状に連結したオリゴアルマンはこれまで合成例がなく、その構造的特性や反応性は未解明であった。我々は連結したそれぞれのアルミニウム原子の酸化数が混合原子価状態にあるのか、あるいは酸化数が1または2で独立した電子状態にあるのかを明らかとすべくX線光電子分光 (XPS) による酸化数の同定を行った。 またXPSを用いたアルミニウム化学種の酸化数の同定例は極めて限定的であったため、参照化合物となるアルキル基、アミノ基が置換したアルマニルアニオン、ジアルマン、およびハロアルマンについてもXPS測定を行い、中心アルミニウム原子の酸化数が小さくなるにつれてXPSで得られるアルミニウム内殻電子の束縛エネルギーが小さくなること、XPSから得られる束縛エネルギーが計算により得られるアルミニウムのNPA電荷および内殻3p軌道のエネルギー準位と直線的な相関を示すことを明らかとした。この成果についての論文をChemistry A European Journal誌に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
さまざまな置換基を導入したアルミニウム求電子剤を用いることでアルキル基、アリール基、ブロモ基を有するトリアルマン化学種が合成でき、それぞれを単結晶X線構造解析を用いて同定した。得られたトリアルマン化学種について、そのアルミニウム原子の酸化数を帰属するために名古屋大学理学部唯先生、邨次先生とX線光電子分光 (XPS) を用いたAl 2p電子の束縛エネルギーを測定し、トリアルマンのアルミニウムが3より小さい酸化数を示すことを明らかとした。また、東大物性研尾崎先生とも共同研究を行っており、量子化学計算により予測されるトリアルマン化学種のAl 2p電子の束縛エネルギーが実験結果と一致することが示された。 求核性アルミニウムアニオンとアルミニウム求電子剤の反応によりトリアルマン化学種を合成できたことから、さらなるアルミニウム-アルミニウム結合性化学種を合成できると考え、2023年度後半からは非対称ジアルマン(4)種の合成検討も併せて行った。2つのアルミニウム上に異なる置換基を有する非対称なジアルマン(4)化学種はこれまで合成報告がなかった。本研究では、新規ジアルマン(4)化学種の合成とその構造の同定、またアルケンとの反応性を調査した。現在その内容を論文として投稿する準備に入っている。 上記の成果について、1件の国際論文雑誌への投稿、1件の国際学会での発表、7件の国内学会での発表、1件の雑誌掲載として報告している。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は上記2つの研究成果について論文発表を行うとともにさらなるアルミニウム含有新規化学種の性質の解明を行う。我々は現在までにアルミニウム原子が2つ、または3つ連結した分子の新規合成手法の開発、およびそれら分子の反応性を解明してきた。特にアルミニウム原子が3つ連結したトリアルマン化学種については電気化学測定により可逆な還元波が観測され、アルミニウムの空軌道に由来すると考えられる高い電子受容能を示す結果が得られている。我々はこれまでに4つ以上のアルミニウム原子が連結した分子の合成に挑戦してきたが、その過程でアルミニウム原子を4つ含むジアニオン性化学種の合成に成功し、その構造を単結晶X線構造解析によって明らかとした。この分子は空軌道を有し電子不足な性質を示すことが予測される直鎖アルミニウム分子の容易に還元される性質を強く反映した分子であると言える。2024年は、この標的分子の合成法、単離手法を確立し、さらにその反応性を究明する計画である。近年ホウ素含有分子を窒素雰囲気下で還元することによる窒素固定反応なども報告されており、還元状態にあるアルミニウム分子が窒素分子と反応することが期待できる。
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