研究課題/領域番号 |
22KJ1642
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補助金の研究課題番号 |
21J00379 (2021-2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2021-2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分12010:基礎解析学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
鶴見 裕之 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | Hall-MHD方程式 / 確率偏微分方程式 / 定常Navier-Stokes方程式 / 流体数学 / Navier-Stokes方程式 / 定常解 |
研究開始時の研究の概要 |
Navier-Stokes方程式をはじめとする流体方程式は、水流などの粘性のある流体の運動を記述する数理物理学上における極めて重要なモデルである。本研究はそのモデルの適切性、すなわち現実の流体をどこまで正確に表現し得るかについての限界点を探ることを目的とする。実際、既知のデータである外力の属する関数空間の位相(滑らかさ)を極端に粗雑にすると、方程式から数学的に得られる解(流体の流速)が外力に連続的に依存しなくなるという奇異な現象(非適切性)が発生する。本研究はこの非適切性を考察することで、逆に方程式が適切となるような関数空間の位相の限界を見出すことを目指す。
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研究実績の概要 |
本年度前半では外力として確率変数(ホワイトノイズ)を考えた時のBurgers方程式の1次元トーラスにおける解の一意存在性、およびその期待値のエネルギー評価に関する先行研究を調査した。特に古典的な乱流理論であるKolmogorovの予想について、レイノルズ数による具体的なエネルギー評価を行う手法を学び、Navier-Stokes方程式や他の微分方程式への応用可能性について探求した。1次元特有のテクニックが多く結果的に多次元への応用は困難に見られたが、確率偏微分方程式論と乱流理論の結びつきについて理解を深めることができた。 本年度後半はXin Zhang氏(中国・同済大学)、およびJin Tan氏(CYセルジーパリ大学)と共同で、Hall効果を伴う磁気流体方程式(Hall-MHD)の定常問題について、その一意可解性および非適切性に関する研究を行った。実際、当研究員による定常Navier-Stokes方程式のBesov空間上での研究手法と同様に非線形項のアプリオリ評価を行うことで適切性の結果を得た。一方で外力の属する空間のノルムが弱い場合には外力に対する解の連続依存性が破たんすることを確かめたが、これは磁場を0として定常Navier-Stokes方程式に帰着させて既存の結果を応用した結果にすぎず、現在はHall項が引き起こすより詳細な非適切性について研究中である。 また本年度は日本数学会秋季総合分科会をはじめ、各地の大学でのセミナーや研究集会において、昨年度に得られた研究結果について講演を行った。同時に流体数学を専門とする各地の研究者との意見交換、および研究発表の聴講を通して、自身の研究結果の改善可能性について示唆を得ると同時に、各研究者による最新の研究結果とその詳細について情報を収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度に比較すると新規の論文を執筆できなかったためやや遅れている。ただし一方で、確率偏微分方程式での解析手法の習得、またHall-MHD方程式の定常問題に関しての共同研究者との議論の深化は次年度の課題研究の準備として有意義なものであり、次年度での研究に期待することが出来る。
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今後の研究の推進方策 |
Hall-MHD方程式の定常問題についてはその非適切性について探求していく。具体的には当研究員による定常Navier-Stokes方程式における非適切性の先行研究との差別化を図るため、速度場の方程式での外力をゼロ、磁場の方程式の外力を非自明なものとして考え、与えられた外力に対する定常解の連続依存性が破たんする例を構築していく。特にHall効果に基づく非線形項の解析を通して、そのアプリオリ評価が閉じない関数空間を見出すことを目指す。 また当研究員の過去の研究と関連する方程式として、層流による異方性Navier-Stokes方程式(3次元空間において2方向にのみ粘性が働く場合)の定常問題を研究していく。ここでは考える関数空間も異方性をもつため、従来の研究手法がどこまで応用できるかを探りつつ、適切性・非適切性の議論を進めていく。 また与えられたデータに対する解の連続不依存性の他に、解の非一意性の意味での非適切性について考える。具体的には近年発表された外力つき非定常3次元Navier-Stokes方程式の弱解の非一意性に関する先行論文を参考に、それが2次元や境界値問題にも適用できるかどうかの可能性を探っていく。
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