研究実績の概要 |
本研究の目的は、断層の摩擦応力状態とその合理的空間解像度の同時推定である。断層滑りの推定において、空間解像度を超パラメターで表現するベイズ正則化で同様の問題が扱われてきたこともあり、本研究はベイズ正則化による断層の摩擦応力状態の推定法の開発と応用を主眼においてきた。
昨年度まで、ベイズ正則化においては超パラメター推定時に一般に推定規準に応じて推定値が二分されるという、当初想定されていなかった発見があり、その原因究明(Sato, Fukahata, & Nozue, 2022; Sato & Fukahata, submitted)および手法改善に注力してきた。手法改善については今年度も引き続き実施し、日本地球惑星科学連合2023年大会で発表した他、セミナー依頼を受け東北大学で講演し、現在論文にまとめている。
上述のベイズ正則化の手法的問題を大部分解決し終えて、今年度は断層摩擦応力状態の推定法の開発と応用に進んだ。昨年度まで試験的に運用していた、静弾性逆問題を経由して断層の固着情報を推定する新手法を、人工データで性能評価した後、南海トラフ沈み込み帯の測地データに適用した。適用により、1944年東南海地震と1946南海地震に対応する高滑り欠損域と、対応した摩擦的固着域を検出した。この結果は、従来同一視されていた、高滑り欠損域と固着域とを分離するという近年の研究動向に沿ったものであり、想定震源域において断層滑りのみならず断層摩擦状態をモニタリングできる可能性を示唆するものである。本成果について、今年度、国内学会一件と国際研究集会一件で発表しており、加えて国際研究集会一件で発表を予定している。
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