研究課題/領域番号 |
22KJ1695
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補助金の研究課題番号 |
21J22276 (2021-2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2021-2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分37030:ケミカルバイオロジー関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
廣瀬 優希 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
2023年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2022年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2021年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
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キーワード | ピロール-イミダゾールポリアミド / 二本鎖DNA結合性分子 / 環状ペプチド / 遺伝子発現制御 / トリプレットリピート / 環状ピロール-イミダゾールポリアミド / 細胞透過性 |
研究開始時の研究の概要 |
ピロール-イミダゾールポリアミド(PIP)はDNAの塩基配列(A,T,G,C)を特異的に認識して結合する分子である。その高い塩基配列特異性や結合能を活かして、遺伝子発現制御スイッチや蛍光プローブ、抗がん剤としての応用を目指した研究が行われてきた。中でも環状構造を持つPIP(cPIP)は従来のヘアピン型PIPに比べて高い結合能・配列特異性を示すことが知られている。 本研究課題では、がんをはじめとする様々な疾患の治療薬としての応用を目指してcPIPの機能評価・改善を行う。
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研究実績の概要 |
ピロール-イミダゾールポリアミド(PIP)はDNAに塩基配列特異的に結合する分子である。本研究課題では、特に環状構造を持つPIP(cPIP)の機能評価・改善を行うことを目標としている。cPIPは従来のヘアピン型PIP(hPIP)に比べて高い結合能・特異性を示すことが知られており、様々な疾患に対する薬剤としての応用が期待できる。当該年度は主に(A) PIPの細胞取り込み効率の違いを生む要因の解明と(B) CAG/CTG 反復配列を標的としたcPIPの機能向上に取り組んだ。 (A) これまでの研究で、cPIPがhPIPより低い細胞取り込み効率を示すことが示唆されていた。そこで、今年度はそのような違いが生じる要因を解明しcPIPの細胞内機能の改善につなげることを目指した。まず、フローサイトメトリーによる細胞取り込み機構の評価を行った結果、PIPが複数のエンドサイトーシス経路を介して細胞に取り込まれていることが示唆された。さらに、NMRや分子モデリング、MDシミュレーションによる解析の結果、PIPと細胞膜との相互作用の様式や、相互作用の強さに影響しうる構造の違いに関するいくつかの知見を得た。なお、これらの研究はクイーンズランド大学のDavid Fairlie教授、Huy Hoang博士、Liping Liu博士の指導のもとで行った。 (B) これまでの研究において、様々な疾患の原因となるCAG/CTG反復配列に対して高い結合能・特異性を示すcPIPを開発し、そのcPIPが疾患の原因となる異常な遺伝子の発現抑制や病態の改善を示すことが明らかになっていた。今年度はそのcPIPの構造に修飾を加えることでその活性を向上することを目指し、PIPとDNAとの複合体の分子モデリングを行うことで修飾部位とPIPとをつなぐ適切なリンカー長の見積もりを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(A)PIPの細胞取り込みについて研究するうえでその取り込み機構を理解することは重要であり、当該年度の研究においてPIPが複数のエンドサイトーシス経路を介して細胞に取り込まれていることが示唆されたことは意義深い。また、NMRや分子モデリングを用いてPIPの構造と細胞取り込みの関連を理解しようとする試みは新たな挑戦であったが、PIPの構造によって脂質膜との相互作用に違いが生まれ、細胞取り込みの違いが生じていることを示唆する結果が得られた。脂質膜モデル存在下でのMDシミュレーションから得られたPIPと細胞膜との相互作用様式に関する知見も踏まえ、次年度以降の研究の進展につながる結果が得られたといえる。 (B)の研究では分子モデリングの結果から適切なリンカー長を持ついくつかの有望な化合物の設計が完了しており、今後のin vitro系での機能評価にスムーズに移行できる状態が整っている。 以上の理由から本研究課題はおおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
(A)上述した結果の妥当性を確かめるため、今後はリポソームを用いた実験等を行いPIPと脂質膜との相互作用の測定を行いたい。また従来のPIPの細胞取り込みの評価法では、蛍光色素を付加することで分子量や電荷などの性質が変化し元の化合物と異なる細胞取り込み特性を示してしまうことが懸念されるため、PIPの構造を保ちつつ細胞取り込みを評価できる手法を確立することも目指す。 (B)すでに設計が完了した候補化合物がDNAとの結合において期待通りの性能を示すか確認する実験を行い、良い結果が得られたものについて細胞実験により遺伝子発現抑制の評価を行いたい。さらに、CAG/CTG反復配列を標的とするcPIPの応用の幅を広げるため、CAG/CTG反復を含む遺伝子が関連する他の疾患の細胞を用いて遺伝子発現抑制や細胞毒性の評価を行う。
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