研究課題/領域番号 |
22KJ1697
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補助金の研究課題番号 |
21J22348 (2021-2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2021-2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
樋沢 規宏 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
2023年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2022年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2021年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
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キーワード | 集団運動 / 生成座標法 / 共役運動量 / 対相関 / 四重極演算子 / 平均場理論 / 集団部分空間 |
研究開始時の研究の概要 |
原子核では陽子と中性子の複雑な量子効果により、協調的な運動が創発される。核分裂に代表されるこれらの運動は集団運動と呼ばれる。集団運動の記述には量子的な重ね合わせの効果が重要である。しかしながらどのような量子状態を重ね合わせればよいかは非自明であり、従来の直感に基づく手法では上手くいかないことが知られている。そこで我々は集団運動における運動量に着目し、その効果を取り込むことができるような量子状態を選択することで、集団運動の記述を目指す。
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研究実績の概要 |
本年度は対相関の寄与を考慮した場合における、動的生成座標法 (DGCM) の効力を調べた。 引力により支配される原子核系では、超伝導現象に代表されるような対相関の寄与が、現象を記述する上で重要となる。そこで本研究では、非局所型の核力であるGogny有効相互作用を用いた、3次元Hartree-Fock-Bogoliubov (HFB) 法の計算コードを開発した。このHFB法により対相関を考慮して計算された波動関数は、陽子数や中性子数に揺らぎを持つ。しかしながら、熱力学極限がとれるほど粒子数が多くない原子核では、この揺らぎは正当化されない。そこで本研究では、波動関数を粒子数の固有状態に射影した。 以上をもとに、18Oの四重極演算子に付随する大振幅集団運動に対して、対相関および粒子数射影の効果を考慮したDGCM計算を実行した。対相関の考慮により、核分裂などにおいて重要になる大きく変形した状態を、適切に取り扱った計算が可能になる。DGCMの結果を従来の生成座標法(GCM)と比較したところ、和則において改善が得られた。具体的には、GCMでは理想値の半分程度しか再現できないのに対し、DGCMでは理想値に非常に近い結果が得られた。また混合する状態を固定した上で、混合時のGogny相互作用のパラメータを変えたところ、和則において同様の改善が見られた。これは我々の手法により、相互作用の詳細に寄らない四重極演算子に重要なモードを抽出することに成功した結果であるといえる。 また本年度は、GCMの厳密な定式化を行ない、多様体という観点からDGCMや複素生成座標法 (CGCM) の再定義を行った。この時、発見法的に知られていたCGCMとDGCMが等価になる条件が、多様体の観点から自然に、そして厳密に得られることを見出した。また、その条件を数値的に取り扱いやすい形式で表現することにも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画ではより多様な集団運動の計算を可能にするため、対相関を考慮した計算コードの開発を行い、共役運動量の効果を調べることを目的にしていた。本年度は予定通り大変形した状態を取り入れたDGCM計算を行い、共役運動量の重要性を確認した。本来の計画では、現在用いている共役運動量の生成法が機能しない可能性があったため、別の手法の検証も想定していた。しかしながら現在の手法で十分よく集団運動の記述が行えていたため、それは行わなかった。以上のことから、当初の目的は達成したと言えるため、研究はおおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、対相関の有無に関わらず共役運動量の寄与は重要であることが確認された。次年度は一連の研究で得られた知見に基づき、核分裂のような複雑な集団運動に対してDGCMを適用し、共役運動量の重要性を探る。ただし、このような集団運動に対しては計算コストの問題が想定されるため、系に軸対称性を要請することで対処する。また、現在使用しているGogny有効相互作用などは密度依存項を持つが、これは厳密な量子論と矛盾する性質を持つため、計算結果が不安定化しやすいという問題が存在する。しかしながら、多体相関の一部を犠牲にする代わりに量子論と無矛盾な取り扱いを可能にする処方箋が考えられるため、それを採用することによりこの問題に対処する。
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