研究課題/領域番号 |
22KJ1714
|
補助金の研究課題番号 |
21J22968 (2021-2022)
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2021-2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分33010:構造有機化学および物理有機化学関連
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松尾 悠佑 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
2023年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2022年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2021年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
|
キーワード | ナノグラフェン / ヘリセン / ヘテロヘリセン / キラリティー / 酸化的縮環反応 / キラル光学特性 / 炭素ー炭素結合切断 / 超原子価ヨウ素 / サーキュレン / ヘテロサーキュレン / シクロデカペンタエン / サドル型構造 / 湾曲ナノグラフェン / GRRM / サドル反転 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では非平面構造を有する新規ナノグラフェンの創出し、湾曲構造に起因する磁気特性及びキラル特性の解明を目的としている。中でもヘリセンは古くから研究されてきたキラリティーを有するナノグラフェンであり、数多くの構造物性やキラル特性が報告されてきた。しかしながらヘリセンを系統的に合成し、ヘリカルピッチとキラル特性の関係性を調査した研究例はほとんど存在しない。そこで本研究では酸化的縮環反応を用いてピッチの異なる含窒素ヘテロヘリセンの系統的合成法を開発し、得られたアザヘリセンのピッチ依存の物性評価を試みる。
|
研究実績の概要 |
ヘリセンは古くから研究されてきたキラリティーを有するナノグラフェンである。最近ではキラル光学特性に加えて分子サイズのバネやコイル、電子スピンフィルターとしての性質にも注目が集まっている。その中でヘリセンのキラル特性を外部刺激によって制御する研究が近年盛んに行われている。しかしながら、これまではキラル特性を示すヘリセン骨格に対して外部刺激応答性を示す骨格を組み合わせた複雑な系が多く、ヘリセン骨格自体が外部刺激に応答して構造を変化させるシンプルな系の報告例は限定的であった。そこで本年度において申請者は、外部刺激に応答して単量体と二量体の間で可逆的な変換が可能なヘテロヘリセンを合成し、キラル特性のスイッチングに関する研究に取り組んだ。 申請者らがこれまで開発してきた「ヘテロ芳香環をオルトフェニレン架橋した環状前駆体に対する酸化的縮環反応を用いたヘテロサーキュレンの合成法」をピロールとチオフェンを有する環状前駆体に適応することで、部分的に縮環反応が進行したヘテロヘリセンを合成した。このヘリセンは超原子価ヨウ素を用いた酸化によってピロールのβ位で新たなC-C結合が生成し、位置選択的な二量化を示した。このC-C結合は1.6 Åと通常のC-C単結合よりも長く、得られた二量体に対して光照射を行うことで長いC-C結合の切断を伴って再度単量体が得られた。いずれの変換反応も高収率で進行し、単量体と二量体間の可逆的変換が可能であることを示した。これらのヘリセンはいずれもキラルHPLCによってエナンチオマーを分離することができ、室温下ではラセミ化を起こさないことも確認された。そしてこのヘリセン単量体は溶液中で青色蛍光とCPLを示し、一方で二量体は蛍光もCPLも示さなかった。そのため今回合成したヘテロヘリセンは新規なturn-on型のCPLスイッチとして機能する可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初申請者は歪んだ構造を有する新規ナノグラフェンの合成と湾曲構造に起因する磁気物性の解明を目的としていた。そのためらせん型構造を有するヘリセンを目的分子に設定し研究に取り組んだ。反応条件の検討を重ね目的のヘテロヘリセンの合成を達成したものの電気化学測定から酸化条件に対して不安定であり、ラジカルカチオンのような開殻種の合成が困難であることが判明した。その理由を調査する中で酸化条件においてヘテロヘリセンが位置選択的二量化反応を起こすことを解明した。当初の研究計画とは異なるものの、その過程でヘテロヘリセンの単量体・二量体間の変換反応の高効率化や(キラル)光学特性の測定を行うことで新規なturn-on型CPLスイッチとして作用する可能性を見出したという点では意義があったと言える。さらに、現在ではよりシンプルな構造に対して同様の反応を試すことで詳細な反応機構や適応範囲の解明に努めており、現在のところ概ね研究は順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策は、酸化種が安定であると考えられるピロールとベンゼンから成るアザヘリセンを系統的に合成し、ピロール窒素上にアルキル基の導入を試みる。電気化学測定によってヘリセンのひずみやピッチと酸化還元特性の関係について解明を目指す。ラジカルカチオンやジカチオンなどの酸化種におけるヘリセンのピッチを調べることができればヘリセンのバネ定数を求めることができる可能性があり意義のある研究になると予想される。
|