研究課題/領域番号 |
22KJ1767
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補助金の研究課題番号 |
22J00089 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
安田 将 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 古代懐疑論 / アカデメイア派 / カルネアデス / キケロ / アウグスティヌス / 合理性 / 蓋然性 / 懐疑主義 / ピュロン主義 / ヒューム / デカルト / 経験論 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、古代懐疑主義が生じた思想背景と、古代懐疑主義の近代的影響を条件づけている思想背景をともに重視することで、古代懐疑主義の特徴を、そこに介入しているかもしれない近代的前提を相対化しつつ再検討する。(i)信念形成に関する徳を特徴とするとされる古代のアカデメイア派由来の懐疑主義、(ii)デカルトの方法的懐疑としばしば対照される古代ピュロン主義、(iii)懐疑主義と同様古代哲学に由来する相対主義について、各立場が生じる条件となっていた思想的な背景を重視する仕方で重要な特徴を明らかにする。それにより同時に、各立場が影響を及ぼした近代的な懐疑主義や相対主義の特徴にも示唆を与えることが期待される。
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研究実績の概要 |
前年度末より、海外研究機関にて訪問研究員として在外研究を行った(2024年3月まで)。以下の三論文(a-c)を制作した、前二者は、それぞれ(a)滞在先研究機関にて口頭発表を行い、(b)次年度初頭(2024年4月)の国際学会における口頭発表のための応募を行った(報告書作成時には採用通知・口頭発表済み)。 (a)古代のアカデメイア派は、「不確実なものへの同意は、偽なるものへの同意と同じく、誤謬である」という基準をストア派と共有した上で、知者(誤謬から自由な者)であるためにはあらゆる同意を差し控えることが必要だと論じた。本稿は、キケロの『アカデミカ』にみられる、あらゆる同意の差し控えを最大の義務とするアカデメイア派の立場は、「知恵をもち誤謬から自由な者であるべき」であること自体に対する懐疑的留保というキケロに特有の要因にもとづいて立てられていることを示した。 (b)懐疑的アカデメイア派に、たんに論駁的ではない建設的な「真理の探究」を帰する解釈は、古代から一定の支持を得ている。本稿は、懐疑的な真理探究についての可能な解釈のうち、(i)表象が真でありそうであることを(なんらかの意味で)正しく判断できる能力を知者に認める立場から、(ii)とりわけ「完全な」真理探究が知者にとって(のみ)可能だとする立場を区別し、(i)をカルネアデスに帰することは十分に可能であるのに対して、(ii)を帰することはおそらく不可能であり、後者は真理と「真でありそうなもの・真に似ているもの」との間の類似性に関する(ラテン語で書かれたキケロの著作に特有の)前提を有すると論じた。 (c)あらゆる同意を差し控えることによって「不行為(アプラクシアー)」が帰結する問題に関する、ギリシア語資料とラテン語資料との間の差異について、知者にふさわしい生の論点の存否ではなく、当該論点に帰された意味づけの点から説明されると論じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度末時点での研究実施計画では、アカデメイア派懐疑論に関しては一つの論文を制作する予定であったが、実際の論文制作を行っていくなかで、三つの論文へ分割することになった。それぞれの論文制作を今年度の在外研究中に進め、うち二論文は口頭発表を済ませ、次年度(PD三年目)に雑誌投稿予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度(PD三年目)に、アカデメイア派懐疑論に関する三論文(a-c)のうち二者(b, c)については学術誌投稿を行う。残り一者(a)については改稿版を学会口頭発表を行い(発表受理済み)、海外学術誌への投稿をめざす。 同時に、(i)ピュロン主義的懐疑論に関する二論文の準備を行うとともに、(ii)アカデメイア派懐疑論の基礎資料の一つであるガレノスの著作『最良の教育について』翻訳を進める。(i)についてはPD期間終了後の翌年度に学会口頭発表を行う予定である。(ii)については、PD三年目もしくは翌年度に学術誌投稿予定である。
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