研究課題/領域番号 |
22KJ1768
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補助金の研究課題番号 |
22J00094 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分43040:生物物理学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 (2023) 京都大学 (2022) |
研究代表者 |
山本 啓 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | アクチン細胞骨格 / 光遺伝学 / 脂質膜 / in vitro再構成 / アクチン / 人工細胞 / 細胞遊走 |
研究開始時の研究の概要 |
動物細胞における遊走は、アクチン細胞骨格がミオシンや架橋タンパク質とともに細胞膜と力学的に相互作用することで可能となる。近年、様々な細胞種・生物種において細胞-基質間接着に依存しないアメーバ様遊走に関する報告が相次いでいるものの、その駆動原理には不明な点が多い。本研究では、アクチン細胞骨格の時空間動態と膜変形、その結果としての細胞遊走との因果関係を問うために、シグナル伝達系を排除した構成成分が既知の人工細胞においてアメーバ様遊走をin vitro再構成することを目指す。さらに、再構成系においてアクチン細胞骨格の動態を操作可能な光遺伝学ツールを開発し、時空間分解能の高い摂動実験も試みる。
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研究実績の概要 |
動物細胞における分裂や遊走、膜の突出といった様々な変形現象は、アクチン細胞骨格動態の時間的・空間的な制御によって可能となる。本研究では、アクチン重合を光依存的に操作する申請者独自の技術と精製タンパク質を用いた再構成系を組み合わせることで、アクチンの時空間的な動態と極性形成や運動との因果関係を構成的に理解することを目指している。昨年度までに、必要となる光遺伝学タンパク質、および主要なアクチン細胞骨格タンパク質の精製が完了した。さらに、青色光依存的に結合することが知られているiLID-SspBシステムをin vitro再構成系に用いるための条件検討も完了した。そこで今年度は、上記の精製タンパク質および光遺伝学技術を組み合わせ、脂質平面膜上および油中水滴中において光依存的なアクチン重合を可能とする条件を探索した。さらに、アクチン脱重合因子の添加による可逆的な重合・脱重合の制御や、任意の形状でのアクチン重合など、光を用いることによる本技術の拡張性が確認されている。 今後は、光依存的に重合したアクチンの密度や伸長速度、使用している光遺伝学タンパク質の会合状態などに関して更なる特徴づけが必要である。また、当初予定していた油中水滴中における光依存的なアクチン重合については未だ成功しておらず、細胞運動を引き起こすには至っていない。脂質平面膜を用いた実験において、アクチン重合活性化因子の集積量に応じてアクチン重合の可否が決まることが示唆されていることから、油中水滴やリポソームといった閉鎖系においては光依存的な活性化因子の集積量が不十分な可能性がある。今後、使用する脂質の組成やタンパク質の局在化の方法についてさらなる改善が必要である。また、脂質平面膜を用いた実験系についても、混合するビーズのサイズや形状について検討を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までに、必要となる光遺伝学タンパク質、および主要なアクチン細胞骨格タンパク質の精製が完了した。さらに、青色光依存的に結合することが知られているiLID-SspBシステムをin vitro再構成系に用いるための条件検討も完了した。そこで今年度は、上記の精製タンパク質および光遺伝学技術を組み合わせ、脂質平面膜上および油中水滴中において光依存的なアクチン重合を可能とする条件を探索した。特に、使用するアクチン重合活性化因子のドメインや、効率的にアクチン重合の活性化因子を脂質平面膜上に集積させるためのリンカーの長さ、光照射方法、脂質平面膜の展開方法等について検討した結果、脂質平面膜上で網目状アクチンを光依存的に重合させることに成功した。さらに、アクチン脱重合因子の添加による可逆的な重合・脱重合の制御や、Digital Micromirror Deviceを用いた任意の形状でのアクチン重合など、光を用いることによる本技術の拡張性が確認されている。また、タンパク質1分子からオルガネラスケールの様々なサイズの蛍光ビーズを再構成アクチンと混合することで、アクチンの網目構造の生理的意義を問うといった新たな展開も見られ、様々な細胞内構造体のサイズが果たす役割について普遍的に示唆を与えることが期待される。加えて、再構成されたアクチンの網目構造の実態を理解するため、膨張顕微鏡法による超解像化にも取り組み、脂質平面膜上でのアクチンの枝分かれ構造をフィラメント1本レベルで可視化することにも成功した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、光依存的に重合したアクチンの密度や伸長速度、使用している光遺伝学タンパク質の会合状態などに関して更なる特徴づけが必要である。また、当初予定していた油中水滴中における光依存的なアクチン重合については未だ成功しておらず、細胞運動を引き起こすには至っていない。脂質平面膜を用いた実験において、アクチン重合活性化因子の集積量に応じてアクチン重合の可否が決まることが示唆されていることから、油中水滴やリポソームといった閉鎖系においては光依存的な活性化因子の集積量が不十分な可能性がある。今後、使用する脂質の組成やタンパク質の局在化の方法についてさらなる改善が必要である。また、脂質平面膜を用いた実験系についても、混合するビーズのサイズや形状について検討を進める予定である。
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