研究課題/領域番号 |
22KJ1770
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補助金の研究課題番号 |
22J00182 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分17040:固体地球科学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
上田 拓 京都大学, 防災研究所, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 地殻内地震 / せん断ひずみエネルギー / GNSS / ひずみ速度 / 背景応力場 / 背景地震活動 / 地震活動 / HIST-ETASモデル |
研究開始時の研究の概要 |
地震発生機構の理解において、理論・観測に基づいて地震活動を再現し、予測するモデルの構築は地震学における重要な課題の1つである。特に背景地震活動度の時空間変化を物理メカニズムと直接結び付けるモデルの構築が必要である。地震はプレートの相対運動により地球内部に生じた応力を解放するために発生するため、測地データから推定される地球内部のひずみ速度と、地震の発生頻度は相関することが考えられる。本研究の目的は、地殻内の背景地震活動度とひずみ速度の定量的関係を明らかにし、ひずみ速度を取り入れたより高度な地震活動モデルを構築することである。
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研究実績の概要 |
昨年度は日本の地殻内地震発生数とGNSS変位から推定されたひずみ速度との空間的相関関係を調べたが、今年度はひずみ速度だけでなく、地震のメカニズム解から推定された応力場との関係を考慮したせん断ひずみエネルギー密度変化と地震数との相関関係を評価した。 震源カタログには気象庁一元化処理震源カタログを使用した。2002-2010年の深さ30km以浅の地震活動(M > 1.9)に対して、Zaliapin and Ben-Zion (2020)の手法を用いて余震活動を除去することで背景地震発生数を計算した。 ひずみ速度の推定には、国土地理院や京都大学などが運営しているGNSSデータを使用した。震源データの対象期間と同じ2002-2010年の日座標時系列(東西・南北成分)に対して平均変位速度を推定した。推定した平均変位速度に対して、Okazaki et al. (2021)の手法を用いて水平ひずみ速度場を推定した。局所的な変動の影響を除去するために、推定された速度場と平均変位速度が大きく異なる観測点を除去し、改めて水平ひずみ速度場を推定した。ひずみ速度テンソルを平面応力状態を仮定して応力テンソルに変換し、Uchide et al. (2022)で推定された背景応力場に対するせん断ひずみエネルギー密度変化を計算した。 日本の地殻内地震発生数とせん断ひずみエネルギー密度変化は統計的に有意な(p < 0.5)弱い相関関係(R~0.2)にあることがわかった。特に西南日本ではひずみ速度と地震発生数との相関と比べて顕著に良い相関を示すことがわかった。 これらの研究結果について、国内学会や国際学会にて発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までの解析で地震発生数とひずみ速度との関係を評価する上で、プレート間固着による変動や局所的な変動の影響が示唆される結果が得られた。今年度は局所的な変動を示す観測点を除去すること、またひずみ速度だけでなく背景応力場との関係を考慮したせん断ひずみエネルギー密度変化を地震活動との相関関係を評価する指標として新たに提案することで、昨年度までの問題点を解決した。その結果、せん断ひずみエネルギー密度変化と日本の地殻内地震発生数は統計的に有意な弱い相関関係にあることがわかり、これらの成果について学会発表を行った。 このように地震活動を測地データを用いて説明するための新たな指標を提案し、学会発表できる成果を上げるなど、概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
日本の地殻内地震とひずみ速度(せん断ひずみエネルギー密度変化)との相関関係についての研究成果を投稿論文にまとめる。また日本で得られた相関関係が国外事例に拡張可能なのかの検討を進める。特にヨーロッパの地殻変動データを用いたひずみ速度場の推定についてフランスの研究者と共同研究を行う予定である。 また背景地震活動をせん断ひずみエネルギー密度変化の関数とした新たな地震活動の物理統計モデルの開発を目指す。ABIC値等を用いることによって既存のモデルと比較して新たに構築するモデルがどの程度有用か評価する。 得られた研究成果は国際学会、国内学会に参加して発表し、様々な分野の研究者と議論を深める。また投稿論文としてまとめることを目指す。
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