研究課題/領域番号 |
22KJ1775
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補助金の研究課題番号 |
22J00665 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分01060:美術史関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
久保 佑馬 (2023) 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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特別研究員 |
久保 佑馬 (2022) 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 西洋美術史 / ルネサンス美術 / ヴェネツィア派絵画 / ティツィアーノ / アルプス南北の美術交流 / 南ドイツ・カトリック改革 / 石板油彩画 / ランベルト・シュストリス |
研究開始時の研究の概要 |
この研究では、16世紀ドイツにおける宗教戦争であるシュマルカルデン戦争(1546~47)終結後、南ドイツのアウクスブルクでルネサンス期ヴェネツィア派の芸術家たちが、どのような活動を行い、カトリック改革(対抗宗教改革)の美術パトロネージと協調したか考察します。ティツィアーノ、パリス・ボルドーネ、ランベルト・シュストリス、ジャン・パオロ・パーチェ、ジュリオ・リチーニオといった画家たちの作品、活動が主な研究対象となります。美術史的重要性のわりに、国際的にも研究が十分には進んでいないテーマですので、欧米の学会にもコンスタントに論文投稿を行い、最終的には、日本語及び欧語での研究書の刊行を目指しています。
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研究実績の概要 |
本課題では、16世紀前半から中葉にかけてのアウクスブルクにおいて、ティツィアーノをはじめとするヴェネツィア派の芸術家たちが、現地でどのような創作活動を行っていたか、実態を研究、調査しています。ルターによる95か条の論題発表(1517年)以降、神聖ローマ帝国ではルター派プロテスタントが急速に勢力を伸ばしましたが、南ドイツ、バイエルン地方の帝国自由都市アウクスブルクでも、1530年代半ばには市参事会が公認を行うほど、ルター派信者が市民の多数を占めるようになりました。他方、神聖ローマ皇帝の直轄地であり、フッガー家など、ヨーロッパ規模で活動する大商人たちが町の自治に参画していたアウクスブルクでは、伝統的なカトリック聖職者、商人たちによる美術パトロネージも一貫して盛んで、そうした宗教的な新旧勢力がせめぎあう中、ヴェネツィアから来訪した芸術家たちが、現地でどのような創作活動を行っていたのか解明しています。 3年の研究期間のうち、2年目となる当該年度は、ティツィアーノのアウクスブルク滞在(1548年、1550~51年)に関し、これまでの研究内容をまとめて口頭発表、論文投稿を行いました。2022年1月に国際美術史学会(CIHA)世界大会で英語口頭発表を行った内容を、同大会会議録のため英語論文にまとめなおし、2023年11月に論文が刊行されました。ティツィアーノの石板油彩画2点に関して分析した同論文の内容は、2024年2月にドイツのハンブルク大学でも英語口頭発表を行いました。国内では、2023年11月に美術史学会の西支部例会(京都市立芸術大学開催)で、ティツィアーノがアウクスブルクで描いたザクセン選帝侯ヨハン・フリードリヒの肖像画2点に関する口頭発表を行い、同月末、同学会の学術誌『美術史』に論文投稿を行いました。論文は採択され、2024年10月ごろ刊行の予定です。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題の研究成果は、最終的に日本語および欧語(英語もしくはイタリア語)の双方で、単著書籍として刊行することを目標にしています。単著は大きく2部構成で、第1部ではティツィアーノのアウクスブルク滞在について、第2部ではパリス・ボルドーネやランベルト・シュストリスといった、ティツィアーノに影響を受けながらも、独立した立場でアウクスブルクを訪問したヴェネツィア派芸術家たちの当地での活動、南ドイツ・カトリック改革(対抗宗教改革)との関連性ついて考察します。日本語単著の完成を先に目指す予定で、出版社の方との具体的な話し合いも進めております。 特別研究員PDの申請時において、1年目は前記ティツィアーノの石板油彩画について、2年目はティツィアーノがアウクスブルクで制作した、ハプスブルク一族の武装肖像画連作について研究すると計画を提出いたしました。前者は2022年度(1年目)に英語論文を投稿し、査読通過ののち2023年度(2年目)に論文が刊行され、後者も2023年度に論文を投稿し、査読通過ののち2024年10月ごろ論文刊行の予定です。したがって、当初の計画通りに研究は進展しており、おおむね順調と評価してよいものと思われます。 当該年度も、夏にイタリアとオランダ、冬から春にかけてドイツとイタリアで研究調査を実施しました。2度とも、ヴェネツィアのジョルジョ・チーニ財団ヴィットーレ・ブランカ研究所で独立研究員を務めながら、絵画作品と文献資料の調査を進め、ヨーロッパの研究者たちと引き続き活発な意見交換を行いました。論文や書籍の執筆に加え、海外の専門研究者たちとの関係構築も進め、研究の国際性という観点からも、従前どおり順調な研究活動を継続しています。
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今後の研究の推進方策 |
2024年4月付で私立大学に助教として就職し、特別研究員PDは中途辞退させていただきました。本課題の最終年度は、新しい職場での教育職務を果たしながらの研究遂行となりますが、これまでと同様のペースで研究を進められるよう努力いたします。 最終年度も、前述の日本語単著執筆に向け、未研究部分を学会等で口頭発表、論文投稿する予定でおります。特に、第1部のティツィアーノのアウクスブルク滞在について、ティツィアーノによるハプスブルク宮廷の女性たちの肖像画について研究し、さらに、男性肖像を含むハプスブルク一族の一連の肖像画が、アントニス・モルやサンチェス・コエーリョといったスペイン宮廷の芸術家たちへ、どのような影響を及ぼすに至ったか考察したいと考えています。 また、すでに日本国内で論文刊行を終えた内容に関しも、必要に応じて自説を修正し、欧米学術誌に改めて論文投稿を行います。例えば、ティツィアーノの弟子でもあったランベルト・シュストリスに関しては、2023年以降、ボローニャ大学のマウロ・ルッコ名誉教授と本格的な共同研究を再開しており、2022年に『地中海学研究』第45号で公刊した論文内容よりも、研究が著しく進展しています。特に、シュストリスの様式変遷に関する再考察や、具体的作例の作者帰属、制作年代推定の見直しなどは、国際的にみても重要な新知見といえますので、なるべく早々に欧米学術誌へ英語論文を投稿したく思っております。
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