研究課題
特別研究員奨励費
世界最短の詩,俳句はその情報量の少なさから常に曖昧性を含んだ芸術である。曖昧性は情報伝達においては避けられるべきものであるが,芸術においてはそれが審美性を向上させることも明らかになっており,本研究では,いくつかの曖昧性を精緻に検討し,その知覚や解消のプロセスが俳句の鑑賞にどのように影響を与えるかをインタビュー調査,大規模なオンライン実験,fMRIを用いた実験室実験と多面的に検討する。
曖昧性という切り口から俳句鑑賞の認知・感情メカニズムについて多角的に検討を行った。研究初期では、俳句の曖昧性が高いほど、美的評価が下がるという関係を見出すのみであったが、調整変数や曖昧性の下位概念を検討することによって、関係性を精緻に扱うことができた。例えば、調整変数について、日本語話者はドイツ語話者よりも曖昧性が美的評価を下げる程度が緩やかであったり、熟達者は、非熟達者が、曖昧性が高いと思う俳句に対しても、評価を下げなかったりすることを明らかにした。下位概念については、自由記述法やKJ法、因子分析の手法を組み合わせ、イメージ、関連、解釈、感情の曖昧性に区分できることを明らかにし、解釈の曖昧性のみは、美的評価を下げないことを明らかにした。また、俳句鑑賞それ自体だけではなく、俳句創作との関連、鑑賞体験がパーソナリティや行動に与える影響も検討してきた。特に、俳句の鑑賞や創作を経ることによって、曖昧性への態度がポジティブに変容する結果は、学術界のみならず、教育や俳壇などにも示唆的・応用的である。このような、パーソナリティ研究を通じて、多次元曖昧性への態度尺度や多感覚イメージ能力尺度の日本語版開発および発展研究も行うことができた。研究手法においても、従来の心理調査、心理実験に、MRIを用いた脳機能計測、瞳孔径・視線計測、自然言語処理・解析など、多様な方法を用いることができた。これらの成果は、国際学術雑誌9報(これから出版されるものも含む)をはじめ、国際学会・国内学会など様々な場で成果報告することができた。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 4件、 招待講演 2件)
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