研究課題
特別研究員奨励費
この研究では、輝く超巨大ブラックホール(クエーサー)の光度変化に着目し、クエーサーの中心構造を調べることを目的としています。クエ ーサーは、超巨大ブラックホールの周囲に降着円盤や広輝線領域、ダストトーラスと呼ばれる構造を持っています。また、降着円盤から放射さ れる光は、時間変動する性質も知られています。超巨大ブラックホール周辺の構造は、降着円盤の光度変化に伴って性質が変化する様子が観測 できます。本研究では、光度変化しているクエーサーを、日本最大口径のせいめい望遠鏡を使用して連続的に分光観測することにより、周辺の 構造の変化を観測し、詳細な特性を明らかにすることを目指します。
銀河の中心部分に存在する超巨大ブラックホールは、その強い重力エネルギーを光へと変換することで、地球から観測可能な明るさの天体として、宇宙の歴史を知る上でヒントを与えてくれる興味深い天体である。超巨大ブラックホールの基本的な物理量であるブラックホール質量は、ブラックホール周辺に分布するプラズマガスの運動を観測することで計算される。しかし、プラズマガスの構造には未解明な点が多く、現在の研究には多くの仮定が置かれている状況である。本研究は、超巨大ブラックホールの光度変動を利用して、超巨大ブラックホール周辺のプラズマガスの分布構造を調査することを目的として遂行した。研究対象として、過去に30年間で4等級明るさが変化するという極端に大規模な光度変動を示した天体SDSS J125809.31+351943.0を選定した。対象天体のX線から中間赤外線までのアーカイブデータに加えて、せいめい3.8m望遠鏡を使用した可視光分光モニター観測を独自に実施し、それらのデータを複合的に解析した。それらの観測から、対象天体の中心核のガス分布構造や極端な光度変動のメカニズムを推定することに成功した。特に本研究によって、対象天体の中心部分にあるプラズマガスが2つの分離した領域に分布していると、従来の定説とは異なる性質が明らかになった。2023年度には、本研究成果に関する学会発表を2件、査読付き主著論文を1編出版した。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 6件)
Monthly Notices of the Royal Astronomical Society
巻: 529 号: 1 ページ: 393-408
10.1093/mnras/stae319
Publications of the Astronomical Society of Japan
巻: Volume 74, Issue 5 号: 5 ページ: 1198-1208
10.1093/pasj/psac063