研究課題
特別研究員奨励費
物質を構成する最小単位である素粒子は、場の理論によって記述される。場の理論の解析は素粒子同士の相互作用が強くなる程困難になってしまうため、通常、理想的な系の対称性に注目した研究が為されてきた。そこで本研究は、リサージェンス理論と呼ばれる、相互作用の強い系の特殊な性質を解読するための理論を用いる。これにより、理想化されていない系の性質へのより進んだ理解が期待される。
近年、リサージェンス理論を場の理論の解析に応用する研究が注目を集めている。リサージェンス理論は形式的な摂動級数から物理量に寄与する非摂動効果を得るための理論的枠組みであり、それを応用した場の理論の相転移現象の記述などが望まれる。特に場の理論では理論のパラメータの繰り込みが重要な役割を果たし、これがリサージェンス理論の手法にどう影響するかを明らかにする必要がある。本研究では、このリサージェンス理論と繰り込みの関係を明らかにするための、多様なアプローチを行った。初年度はあるクラスの簡素化された模型を用いて、物理量の形式的な級数展開と非摂動効果との対応を調べ、相転移現象との関係を明らかにした。また理論のエネルギースケールに関わるパラメータを変化させた時、その対応関係がどのように変化するのかを調査した。次年度はあるクラスのファインマンダイアグラムに注目した。数多くのループを含むダイアグラムを鞍点近似した際、非自明な複素鞍点が寄与し、ダイアグラムの値が激しく振動することを発見した。その振動は理論が繰り込み可能な時に良く抑えられることを明らかにし、非自明な鞍点と繰り込みとの関係を議論した。また、形式的な級数展開を用いた手法を、弦理論の振幅や、AdS/CFTにおける光球のスペクトル解析にも応用した。これらの研究で得られた知見は、ある原子核の構造を可視化する手法へも応用され、幅広い研究成果が得られた。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
Physics Letters B
巻: 848 ページ: 138326-138326
10.1016/j.physletb.2023.138326
Journal of High Energy Physics
巻: 10 (2023) 号: 10 ページ: 149-149
10.1007/jhep10(2023)149