研究課題/領域番号 |
22KJ1901
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補助金の研究課題番号 |
22J15527 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分22060:土木環境システム関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
牧野 裕介 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 移動音源 / 指向性 |
研究開始時の研究の概要 |
乗り物が移動することで放射音に周波数変調(Doppler効果)や振幅の変調が発生する.音源の移動が放射音の指向性に及ぼす影響について,物理的な騒音発生メカニズムごとに,理論的且つ実験的に検証する.この結果を考慮しつつ,放射音の指向性や周波数特性が未知である乗り物の放射音特性を走行音測定データから推定し,推定結果を音源データベースとして利用しつつ音源移動による放射音特性の変化を考慮した音響伝搬計算手法を構築する.その後,この計算手法を道路や鉄道軌道側面に防音壁の存在する区間に適用できる手法へ拡張する.
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研究実績の概要 |
音源の移動に伴うDoppler効果が放射音の指向性(音の放射方向と音のエネルギーの強さの関係)に及ぼす影響について理論的に検討を行った.その結果,マイクロホンによって収録された車両走行データから指向性を算出する場合,音源から音波が放射されてからマイクに到達するまでの時間差の考慮の有無によって指向性の算出結果や算出される音源からの放射音の音響パワーに無視できない違いが生じ,音源の速度上昇とともにこうした違いが大きくなることが明らかになった.また,移動する音源からの放射音を表現する波動方程式における目的変数の違いも,音源移動に伴う指向性の変化に大きく影響を与えることも明らかになった.この内容を国際会議Inter-noise 2022にて発表した. 次に音源の移動に伴う指向性変化について,模型発射実験による実験的検討を行った.その結果,スピーカー等物体表面の振動によって発生する音源について,音源の移動に伴う周波数変調が理論的に計算されるものと測定結果とで一致することを実験的に確かめた.これらの内容を国際会議Inter-noise 2023にて発表予定である. また,車両走行音をマイクアレイで測定したデータを解析して騒音発生源の位置と音源の強さを割り出す音源探査において,静止音源と移動音源の両方についての逆問題を同時に解くこと(Hybrid Deconvolution)による静止音源と移動音源の分離について検討を行い,その成果を日本音響学会騒音・振動研究会にて発表した.この発表により私は学生優秀発表賞を受賞した. また,音源や受音点の移動に伴うDoppler効果の影響を理論的に考慮した,2次元FDTDにおいて指向性のある移動音源と受音点の実装方法についての論文を共著として執筆した.この論文が2023年3月の日本音響学会英文誌に掲載された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
音源の移動が放射音の指向性に及ぼす影響について,これまで理論的検討と実験的検討を行ってきた. 理論的検討については,移動音源からの放射音を表現する数式モデルとして,数学的に等価でありつつ目的変数が音圧と速度ポテンシャルのものとがそれぞれ提案されている.音源が静止している場合は放射音特性に変化が生じないものの,音源の移動する場合に変化が生じることを明らかにした. 一方で,模型発射実験による実験的検討については,スピーカー等物体表面の振動による音源からの放射音の他,風切り音を発生する空力音源(風切り音発生パーツ)についても放射音を測定済みである.これらの収録データについても解析を行い,理論的な検討結果と比較する予定である.また,音源が静止して移流が発生した場合の音源からの放射音について音響風洞を用いた実験によって測定した.音源についてはスピーカーと風吉音発生パーツを使用した.この測定結果をもとに,移流による放射音特性の変化と音源の移動に伴う指向性の変化について比較検討を行い,音源の移動による放射音特性の変化の仕組みについて,理論的検討と組み合わせて明らかにしていく方針である. また,車両走行音をマイクアレイで測定したデータを解析して騒音発生源の位置と音源の強さを割り出す音源探査において,静止音源と移動音源の両方についての逆問題を同時に解くこと(Hybrid Deconvolution)による静止音源と移動音源の分離について検討を行ってきた.しかし,音源の移動に伴う振幅変調について考える際に,マイクアレイ正面(走行車両から見て真横方向)への放射音にはドップラー効果が発生せず,静止音源と移動音源の区別が困難であることが判明した.そのため,この研究の続行を断念した.
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今後の研究の推進方策 |
音源移動に伴うDoppler効果の影響を考慮して移動音源からの放射音について表現する波動方程式は,これまでに目的変数が音圧のものと速度ポテンシャルのものとがそれぞれ提案されている.両者の支配方程式における物理的意味の検証のため,両方程式によって表現される放射音を,空間中における音圧の点駆動によって表現される放射音や平面の振動から伝搬する平面波の重ね合わせによって表現される放射音と比較する. また,都市における騒音対策として道路や線路に防音壁が設置されている例が多くみられ,このうち近年では内側に吸音材が設けられている例も存在する.移動音源から放射音が防音壁に入射する際,防音壁に対して斜めに入射するものの,放射音の入射方向が吸音材付き防音壁の遮音量に与える影響についての検討例は少ない.そこで音源の移動に伴う音源からの放射音の吸音効果の変化について,また吸音材付き防音壁の遮音量の変化について数値シミュレーションや実測により検討する.この結果をもとに,音源移動による放射音特性の変化を考慮した防音壁の遮音量の補正手法を提案してその精度を検証する.
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