研究課題/領域番号 |
22KJ1927
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補助金の研究課題番号 |
22J20011 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分16010:天文学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
浅田 喜久 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
2024年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 銀河 / 銀河形成進化 / 星形成 / 遠方宇宙 / 銀河進化 |
研究開始時の研究の概要 |
宇宙誕生から約20億年以内の宇宙初期における銀河進化の様子はいまだに一致した見解が得られていない。本研究では、静止系紫外光、可視光、遠赤外線における観測データ全てに対して様々な銀河のスペクトルモデルと比較することで星形成活動の推定を行い、それに基づいて銀河の宇宙論的進化を調査する。 特に、静止系可視光の波長域ではJames Webb宇宙望遠鏡による最新の観測も活用することで、従来の観測データを用いた場合に比べ一桁以上暗い銀河まで対象にした調査や、本手法の妥当性の検証にも挑む。
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研究実績の概要 |
本年度は、高赤方偏移宇宙における銀河進化について以下の3つの研究を行った。 1. 前年度に引き続き、SSTの後継機ともいえる最新の宇宙望遠鏡James Webb Space Telescope (JWST)による観測を用いることで、従来よりも一桁以上くらい低質量の銀河の星形成活動に関する調査を行った。JWSTによる観測をもとに100以上のz=5付近の低質量銀河のサンプルを得た。これらの銀河に対し、時間スケールの異なる二つの星形成トレーサー(静止系紫外線とHa輝線)を組み合わせることで、星形成の変動時間スケールを調査した。その結果、高赤方偏移にある低質量銀河では典型的に星形成活動が短い時間スケールで変動していることが明らかになった。このような可能性はJWSTの初期成果や理論研究から指摘されていたものの、観測から統計的調査を行った例は本研究が初である。 2. 同様にz=5の低質量銀河のサンプルを用いて、銀河相互作用が極めて頻繁に観測されることを明らかにした。さらに、銀河相互作用に伴い、星形成活動の変動時間スケールがより短くなることが示唆された。この結果は前年度に偶発的に発見された超低質量合体銀河(ELG1+ELG2; Asada+23)のような例は普遍的な存在であることを示している。従って前年度の発見の重要性を追認するものであり、高赤方偏移にある低質量銀河の進化においては銀河相互作用が極めて重要なプロセスであった可能性が示唆される。 3. さらに一部のサンプル銀河については分光観測データが得られている。これを用いて、銀河相互作用が遠方低質量銀河の星形成活動に与える影響について調査した。その結果、相互作用銀河は他の銀河に比べて金属量が低くなっている可能性が示唆された。このことは銀河相互作用に伴いガス流入が発生し、星形成活動が誘発されるというシナリオを支持している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画ではALMA望遠鏡を用いて、より幅広い波長を用いた調査を行う予定であった。これは計画当初の時点では新型望遠鏡JWSTの観測開始予定日が未定であったことに由来する。しかしながらJWSTは2022年7月より無事観測を開始し、2022年末より順調に観測データが届いている。そこで本年度は、ALMAを用いたより幅広い波長の調査よりも、JWSTを用いたより低質量の(より暗い)銀河に重点を置いた調査を行った。JWSTによる観測からは従来の観測機では検出不可能であったような遠方低質量銀河の星形成活動が統計的に明らかになっており、特に銀河相互作用の重要性が示された結果は望外の進展とも言える。このように、高赤方偏移宇宙における特に低質量銀河の形成進化の描像が統計的に明らかになりつつあることから、概ね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
上記のように、本年度はJWSTによる観測をもとに作成した100以上のz=5付近にある低質量銀河のサンプルを用いた調査を行ってきた。しかしこれは我々の所有するJWSTの観測データのうち一部のみを使用した結果に過ぎず、観測データを全て活用することでサンプル数はおよそ5倍に増えると期待される。したがって今後は、観測データの解析を完了しつつ、利用可能なすべての観測データを用いた統計的調査や、分光観測データに基づいた調査を継続する予定である。
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