研究課題/領域番号 |
22KJ1928
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補助金の研究課題番号 |
22J20019 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分44050:動物生理化学、生理学および行動学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤藪 千尋 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
2024年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | オプシン / 光受容タンパク質 / レチナール / GPCR / リガンド / ロドプシン / 分子進化 |
研究開始時の研究の概要 |
動物の光センサータンパク質として機能するオプシン類は、光受容に特化したGタンパク質共役型受容体(GPCR)であり、リガンドとして11-cis型レチナールを共有結合し、光によりこれをall-trans型に変換することで活性化する。オプシン類の分子進化的祖先は、一般的なGPCRと同様に、拡散性リガンドとしてall-trans型レチナールを直接結合して活性化する受容体であったと推定される。本研究では、オプシン類がall-trans型レチナールよりも11-cis型レチナールへの親和性を高め、光による活性制御能を獲得することで光受容体として分子進化してきたプロセスの解明を目指す。
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研究実績の概要 |
オプシン類は光受容に特化したGタンパク質共役型受容体(GPCR)であり、リガンドとして11-cis型レチナールを共有結合し、光によりこれをall-trans型に変換することで活性化する。オプシン類は遺伝子重複と変異導入による分子特性変化によって多様化し、動物の多彩な光受容機能を担っている。本研究では、多くのオプシン類が共通して11-cis型レチナールへの高親和性を示すメカニズムを明らかにすることで、オプシン類が光受容体としての機能を獲得してきた分子進化過程の解明を目指す。 本年度は、脊椎動物の非視覚オプシンであるOpn5グループにおいてレチナール結合特性の制御に関わる188番目のアミノ酸に着目し、オプシン類で普遍的なレチナール結合特性の制御メカニズムの解明(①)、及びオプシン類における188番目のアミノ酸残基の機能の理解(②)についての研究を行った。 ①については、前年度に引き続きOpn5グループ以外の複数のオプシンを対象に188番目のアミノ酸変異体を作成し、レチナール結合特性を調べた。その結果、節足動物の視覚オプシングループに分類されるオプシンでも188番目のアミノ酸がレチナール結合特性に関与することが分かり、188番目のアミノ酸残基によるレチナール結合特性の制御の普遍性の検証が進んだ。 ②については、Opn5グループでは188番目のアミノ酸残基が光応答特性などの他の分子特性の制御にも関わることを踏まえ、節足動物の視覚オプシンにおいて188番目のアミノ酸変異体の光応答を解析した。その結果、光応答特性に特徴的な変化は確認できず、分子特性の制御における188番目のアミノ酸残基の役割はオプシングループごとに異なると分かった。 加えて、魚類においてオプシン遺伝子の多様化過程に関する解析に取り組み、研究成果を原著論文として発表した。 また国内外にて学会発表を行い、2件の発表賞を受賞した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究実施計画通り、オプシン類で普遍的なレチナール結合特性の制御メカニズムの解明(①)、及びオプシン類における188番目のアミノ酸残基の機能の理解(②)についての研究を行った。 ①については、節足動物の視覚オプシンを対象とした変異体解析により、Opn5グループ以外でも188番目のアミノ酸残基が11-cis型レチナールへの高親和性に重要であることがわかった。現在までに、その他複数グループのオプシンにおいても、変異導入によりレチナール異性体の結合選択性が変化するという結果が得られており、188番目のアミノ酸残基によるレチナール結合特性の制御の普遍性の検証は着実に進んでいる。 ②については、節足動物の視覚オプシンにおいては188番目のアミノ酸残基は光応答特性の制御には関与しないという結果を得た。このことから、オプシンの分子特性の制御における188番目のアミノ酸残基の機能はオプシングループごとに異なると考えられ、オプシンの分子特性における188番目のアミノ酸残基の役割のさらなる理解が進んでいる。 加えて、オプシン遺伝子の多様化過程に関する解析にも取り組んだ。魚類において、脊椎動物の非視覚オプシンであるメラノプシンがretroduplicationという遺伝子重複機構を介して重複し、機能分化してきた過程についての新しい研究成果を、筆頭著者として原著論文にまとめて発表した。 したがって本年度の研究では、当初の予定に相当する成果を得られたと言える。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きOpn5グループ以外の複数のオプシングループにおいて、188番目のアミノ酸残基のレチナール結合特性への寄与について検証を進める。特に、all-trans型レチナールへの親和性を失って11-cis型レチナールのみを結合する、光活性化に極端に特化したオプシンである脊椎動物の視覚ロドプシンに変異を導入することによって、all-trans型レチナールへの親和性を持たせることを試み、トランスジェニック動物でのレチナール結合選択性の生理的意義の検証を目指す。また、前年度に新たに見出した188番目以外の候補残基についての解析も行い、オプシンの分子特性における188番目のアミノ酸残基及び他の候補残基の機能のさらなる理解を目指す。加えて、オプシン遺伝子の多様化過程に関する解析にも引き続き取り組み、動物の光受容システムの成立についての理解を深める。また、国内学会・国際学会に参加して成果発表を行うとともに、本研究で得られた実験結果を論文としてまとめる。
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