研究課題/領域番号 |
22KJ1930
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補助金の研究課題番号 |
22J20113 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分63010:環境動態解析関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
角間 海七渡 京都大学, 情報学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
2024年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 放射性セシウム / 福島第一原子力発電所事故 / 食物網 / DNAメタバーコーディング / 淡水魚類 / 節足動物群集 / 物質循環 / 安定同位体比分析 |
研究開始時の研究の概要 |
2011年に発生した福島第一原子力発電所の事故によって,多量の放射性物質が飛散した.これまで,森林生態系内における放射性セシウムの内部循環と流出についての調査は比較的多くの事例があるものの,水系を通じて森林域と繋がっている下流の生活圏への移行・分散に関しての調査はほとんど行われていない. 本研究では,原子力発電所からの距離が異なる複数の河川流域を対象として生態系内に存在する生物種が持つ放射性セシウム濃度レベルを網羅的に調査する.調査により森林域から生活圏へ食物網を介して移行・分散する放射性セシウムの量と経路を明らかにし,データを広く公開することにより,放射線生態リスク評価への応用を目指す.
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研究実績の概要 |
2011年に発生した福島第一原子力発電所の事故によって,多量の放射性物質が周辺地域に飛散した.放出された放射性セシウムの環境動態は,現在も重要なモニタリング対象となっている. 本研究では,福島の生態系において森林域から生活圏に食物網を介して移行・分散する放射性セシウムの量と経路を観測で示し,各生物種が持つ放射性セシウム濃度特性の要因を検証し,放射線生態リスク評価に応用するため,フィールド調査および分析を行なった. フィールド調査では,2022年6月から10月にかけて,福島県内の各サンプリングサイトでサンプルの採取を行った.水域では,河川水,河床堆積物,一次生産物(藻類,リター),消費者(水生昆虫類,魚類,甲殻類),捕食者(水生昆虫類,魚類)などを採取した.陸域では,土壌,一次生産物(植物,リター),植食者(昆虫類),腐食者(昆虫類,環形動物),捕食者(昆虫類,クモ類,両生類)などを採取した. サンプルの放射能測定や炭素および窒素安定同位体比分析を行うことにより,淡水魚類体内の放射性セシウム濃度に影響を及ぼす要因として,栄養段階より餌資源の方が有力であることが示唆された.魚類体内の放射性セシウムは主に節足動物から移行していると考えられるが,今後はより多量・多種のサンプルを用いて同様の測定を行ない,詳細な移行経路の把握に繋げることを目指す. また,造網性クモであるジョロウグモの消化管および網のサンプルについて,DNAメタバーコーディング手法により,被食生物の同定を行った.消化管と網の両方からクモの具体的な餌資源が検出された.今後は実際に餌資源を採取し,メタバーコーディングによる種構成と比較するとともに,同一のサンプリングサイトで季節変化を調査する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在まで,当初の予定通り各種のサンプルを福島県内のサイトで毎年採取することができている.各年のデータから生物内の放射性セシウムが環境の変化によって半減するまでの時間である生態学的半減期を予測し,生物種,機能群ごとの放射性セシウム濃度低下傾向を明らかにするためのサンプルセットが概ね順調に整備できている. また,外部研究施設におけるサンプルの炭素・窒素安定同位体比分析およびDNAメタバーコーディング手法による被食生物の同定も年度を通して進めることができている.今後はこれらの解析結果をまとめることにより,森林域から生活圏へ食物網を介して移行・分散する放射性セシウムの量と経路を明らかにすること,あるいはデータを広く公開することにより放射線生態リスク評価へ応用することができると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
今後も,各年のデータから生物内の放射性セシウムが環境の変化によって半減するまでの時間である生態学的半減期を予測し,生物種,機能群ごとの放射性セシウム濃度低下傾向を明らかにするために,定期的に福島県内でサンプリングを実施していく. これまでの分析により,淡水魚類体内の放射性セシウム濃度に影響を及ぼす要因として,栄養段階より餌資源の方が有力であることが示唆された.魚類体内の放射性セシウムは主に節足動物から移行していると考えられるが,今後はより多量・多種のサンプルを用いて同様の測定を行ない,詳細な移行経路の把握に繋げることを目指す. また,造網性クモであるジョロウグモの消化管および網のサンプルについて,DNAメタバーコーディング手法により,被食生物の同定を行い,消化管と網の両方からクモの具体的な餌資源が検出された.今後は実際に餌資源を採取し,メタバーコーディングによる種構成と比較するとともに,同一のサンプリングサイトで季節変化を調査する. 最終年度には,地理情報システム(GIS)を用いて調査の結果を時空間データとしてまとめる.データベースを整理し,ホームページ上で上で公開することにより,放射線生態リスク評価への応用を目指す.
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