研究課題/領域番号 |
22KJ1934
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補助金の研究課題番号 |
22J20195 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
吉井 達哉 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
2024年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
2023年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
2022年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
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キーワード | 帰納推論 / グルーのパラドクス / 統計モデル |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、20世紀中頃から哲学者たちを悩ませ続けている帰納推論に関する「グルーのパラドクス」に新しい分析とそれに基づく解決を与えることである。本研究では、ブランダムやセラーズといったプラグマティズムの潮流に位置する哲学者らの見解に基づいて、このパラドクスを「我々の帰納的実践に対する解明の問題」、即ち「我々が帰納的実戦において暗黙的に含まれる規範性を明示的な形で取り出す」として定式化する。そして、マクローの提起する統計モデルの圏論的な定式化を我々の帰納実践において暗黙的に前提されている合理性ないし「自然さ」を明示化する枠組みとして用いることで、グルーのパラドクスに対する解決を与える。
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研究実績の概要 |
第一に、前年度に引き続き、N. Goodmanによって提起された帰納推論についての哲学的問題で あるグルーのパラドクスに対して、理論統計学者 P. McCullaghによって提唱された統計モデルの 圏論的な定式化の観点から分析を行なった。哲学者らによるこのパラドクスの解釈は、グルーのパラドクスを、【1】エメラルドの色に関する帰納的一般化の問題とみなすか、【2】観測時間を共変量ないし独立変数とする回帰問題とみなすかという二種類に分かれる。 本研究では、まず【1】のより正統的な問題設定に関して、(前年度に引き続いて)McCullaghの統計モデルの圏論的定式化の枠組みを用いて分析を行った。そうした分析の結果、元のパラドクスに含まれている問題を「仮説的パラドクス」と「記述的パラドクスの」という二つの異なるパラドクスとして抽出することができた。さらに、これら二つのパラドクスは、McCullagh流の圏論的枠組みにおいて要請される二種類の自然性条件を課すことで解決可能であることを示した。 さらに、今年度は【2】の観測時間を共変量ないし独立変数とする回帰問題として解釈されたグルーのパラドクスについても取り組んだ。この文脈では近年、モデル選択基準が重要であると考えられてきたが、この問題に取り組んできた哲学者らの総意によれば、そうしたモデル選択基準だけではグルーのパラドクスは解決できない。その原因は、そうした基準を適用するためにはそもそも候補となるモデルの集まりを予め特定する必要があり、その際の恣意性が避けられないことである。本研究では、統計モデルの圏論的定式化を回帰モデルに適用することによって、妥当なモデルに十分な制限を加えることができ、それによってこうした問題を解決できることを示した。また、ここで得られる制限は、表現的測定理論において提唱した「有意味性」の基準と一致することも示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【1】の結果については、京都大学の大塚淳先生と共著で論文へとまとめ、The British Journal for the Philosophy of Science に掲載予定である。 【2】の結果については、 PSA Around the World という国際学会で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
まず今後は、【2】の問題に関して得られた結果を論文化する。
さらに、統計の哲学において古典的統計推論に対する哲学的な正当化を与えようとするDeborah Mayoらの「厳しさ説」を Robert Brandom の「推論主義」に接続することにも取り組む予定である。 すでにこのテーマに関して複数回の国内発表を行っており、そうした内容を早急に論文化したい。
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