研究課題/領域番号 |
22KJ1939
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補助金の研究課題番号 |
22J20340 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
志田 夏美 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
2024年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2023年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2022年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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キーワード | ウズベク牧畜民 / 絨毯 / 遊牧文化 / 伝統 / アイデンティティ |
研究開始時の研究の概要 |
中央アジア・ウズベキスタンには、かつて遊牧民が暮らしていた。彼らはソ連の集団化政策により定住生活に移行したといわれている。しかし現地研究者によると、現在も家畜飼育を主たる生業とする彼らの一部は、家畜の毛から「伝統的な」絨毯を手作りしているという。旧ソ連圏の人々の生活はこの100年の間に大きく変容したが、彼らの文化は「変わらぬもの」として語られているようである。 本研究の目的は、牧畜民の家庭に暮らしながら彼らの生活の技術を学ぶことで、沙漠地域に根ざした知の体系を明らかにし、民族学者が語ってきた「変わらぬ伝統」としてではなく、移ろいゆく環境の中で彼ら自身が守り伝えてきたものを明らかにすることにある。
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研究実績の概要 |
2022年度よりウズベキスタン共和国にて長期フィールドワークを実施している。これは、本研究の目的であるウズベク牧畜民の現代的状況を明らかにするために不可欠な調査である。 まず、2022年度前半期に予備調査を実施した。ここでは、今後の長期滞在に向けて、受入研究機関にて現地指導教員と研究面談をおこない、さらに調査候補地について絨毯生産の実施状況や位置関係、インフラ整備の状況などを確認するために、スルハンダリア州ボイスン郡を広域的に踏査し、現地ガイドを介して絨毯づくりに関する聞き取り調査をおこなった。本調査により、ウズベク牧畜民家庭での参与観察を主たる研究課題とする研究実施計画の妥当性を確認することができた。また、現地住民のアイデンティティと地域の関係性について理解することができた。 2022年度後半期より、同国にて長期フィールドワークを開始している。はじめの数か月は受入研究機関のある首都タシュケントにて生活基盤をととのえながら、同市にある家庭教師のお宅でロシア語とウズベク語の言語指導を受けた。当初、研究実施計画には含んでいなかったが、家庭教師のお宅でウズベキスタンの家庭料理の作り方を習ったり、家族行事に参加したりする機会に恵まれたことで、その後のボイスン郡での調査に比較的な視点を取り入れることができた。 2022年秋にはボイスン郡を再訪した。前回の予備調査で訪問できなかった村を踏査すること、その上で定着型調査の候補地を検討することが目的であった。結果、絨毯を販売目的ではなく自家用に作っているクズルナウル村が最適であると判断し、ホームステイの段取りをすすめた。 2023年3月にボイスン郡を再々訪した。ナウルーズ(ペルシャ暦新年)に関する伝統的な催しを観察し、クズルナウル村にて短期的な参与観察型調査を行った。次年度以降の定着型調査の準備が整った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
一つは、COVID-19の影響によりフィールドワークの開始時期が約4か月、遅れたことによる。これにより、研究計画書よりも全体的に後ろ倒しになっているが、採用開始時期に再調整した研究計画としては概ね達成できている。 もう一つは、滞在国における野外調査に対する姿勢・慣習に関して本研究代表者の理解が不十分であったことによる。これにより、想定していた調査計画を実施するにあたって日程面での変更を余儀なくされた。具体的には、博物館・郷土資料館の調査について今年度より断続的にすすめる予定であったがあまり進展していない。同国では、国立機関以外の博物館施設に関する情報について整理されたものがないようで、また受入研究機関がある首都圏外を訪問する際は事前に目的地等の情報を受入研究機関へ伝えた上で出張許可を取得しなければならず、探訪的に郷土資料館の情報を収集することがむずかしいからである。郷土資料館については、今後フィールドワークをすすめる中で知り合った現地住民から細々と情報を集め、訪問するという方法を取るほかなさそうである。滞在終了までの間に可能な限り訪問し、その情報をまとめたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度から2024年度前半期にかけて、ウズベク牧畜民のもとで長期的な参与観察を実施する計画である。しかしながら、受入研究機関(滞在国)側の意向により、頻繁にタシュケントへ報告に戻ることを義務付けられている。そのため、調査村に長いあいだ腰を下ろすような生活を送ることができなくなってしまった。本研究の主たる目的であるウズベク牧畜民の生活誌を描き出すための対応策として、インフォーマントからの間接的な情報提供を織り交ぜることで、通時的に組み立てることを試みたいと考えている。 また2022年度に実施する計画であった博物館や郷土資料館の調査については、2024年度以降に進展できるよう、2023年度中は情報収集を可能な限りすすめたいと考えている。 現地滞在中に収集すべき資料について特定するために、ソ連期の民族学者の文献レビューも並行してすすめていく予定である。
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