研究課題/領域番号 |
22KJ1949
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補助金の研究課題番号 |
22J20903 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分13020:半導体、光物性および原子物理関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中村 勇真 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
2024年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 冷却原子 / 冷却分子 / リドベルグ状態 / 光ピンセットアレイ / イッテルビウム / 量子計算 / 光会合 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、誤り耐性を備えた量子計算実現に向けて、極低温分子の内部自由度を利用した量子計算の実装を目指す。微小な光トラップ内でレーザー冷却されたイッテルビウム原子から極低温分子を生成し、分子の振動準位や核スピンなどの豊富な自由度を量子ビットとして利用する。また、分子の基底状態から高励起状態であるリドベルグ状態へ励起し、リドベルグ分子間に働く相互作用を利用して複数の分子を接続することで、量子回路の構築を目指す。
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研究実績の概要 |
核スピンを有する異核分子生成を目的として、はじめに、前年度までに構築した光ピンセットアレイ系においてボソンの174-イッテルビウム原子とフェルミオンの171-イッテルビウム原子の同時トラップを可能とするレーザーシステムおよび光学系を構築した。その後、このシステムを用いて実際に光ピンセットで2種同位体を同時にトラップし、それぞれを発光イメージングすることに成功した。ここに光会合用の光を照射することで異核分子の生成を試み、1光子光会合を示唆する原子ロスを観測した。また、ここで得られた光会合の共鳴周波数は理論計算から予想される周波数と非常に良い一致を示すことを確認した。 上記の実験と並行して、分子生成の高効率化およびリドベルグ励起の高忠実度化に向けた実験も進めた。まず171-イッテルビウム原子の光ピンセット中でのラマンサイドバンド冷却を行い、トラップ動径方向の2軸について振動基底状態まで原子を冷却することに成功した。続いて、リドベルグ励起の第一段階である基底状態から準安定状態3P2の励起に関して、励起レーザーの周波数安定化システムを改良し前年度までに観測されていた共鳴線幅を1/10程度まで狭窄化することに成功した。これによって基底状態と3P2状態間のコヒーレント励起が可能となり、ラビ振動を観測することができた。また、リドベルグ励起光源の開発も進め、1300nmレーザーを種光としてラマンファイバー増幅器と非線形結晶を用いて高出力な650nm光を生成し、さらに共振器内部での第二次高調波発生によって600mW程度の325nm光を得ることに成功した。これによって非常に高速で高忠実度なリドベルグ励起を試みることが可能となった。 以上の結果を複数の学会にて報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
核スピン自由度の利用を目的とした異核分子の生成に向けて、光ピンセットアレイ中でのイッテルビウム原子のボース同位体とフェルミ同位体の同時トラップに成功し、1光子光会合によって実際に励起状態の単一異核分子(171Yb174Yb)を生成することができた。また、分子の内部自由度操作に必要なラマン遷移光源の準備を終え、予備実験として行ったラマン遷移による原子の核スピン操作実験において高忠実度な内部自由度操作が可能であることを確認した。さらにリドベルグ状態への励起の第一段階である準安定状態へのコヒーレントな励起にも成功し、この技術を分子へ適用することができる段階にある。また、リドベルグ状態への励起光源開発においても、高出力な光源の作成に成功した。 上記と並行して行った無欠損原子アレイ準備のための原子再配列システムの開発も完了し、数十個の原子からなる無欠損原子アレイの作成技術を確立した。
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今後の研究の推進方策 |
はじめに今年度発見した1光子光会合の共鳴と、励起状態分子と基底状態分子を結ぶ誘導ラマン遷移あるは2光子光会合によって、171イッテルビウム原子と174イッテルビウム原子からなる基底状態の異核分子生成に取り組む。その後、分子が有する振動準位のうちの2つをラマン遷移によってつなぐことで内部自由度のコヒーレント操作を試みる。さらに分子の核スピン状態の分光およびコヒーレント操作への展開を目指す。 並行して、原子のコヒーレントなリドベルグ状態励起を行い、リドベルグ状態の寿命や相互作用の大きさなどの基礎データを取得し、それらを基にして分子の準安定励起状態およびリドベルグ状態励起を試みる。その後、分子間のリドベルグ相互作用の測定を目指す。
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