研究課題/領域番号 |
22KJ1957
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補助金の研究課題番号 |
22J21279 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分21050:電気電子材料工学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
石川 諒弥 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,300千円 (直接経費: 2,300千円)
2024年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 炭化ケイ素 / 移動度 / ドリフト速度 / キャリア輸送機構 / 異方性 / バンド構造 |
研究開始時の研究の概要 |
電力変換効率を大幅に向上できる低損失高耐圧パワーデバイス用半導体材料として、炭化珪素(SiC)が注目されている。しかし、SiCの電子物性に関する基礎的な知見が不足しており、デバイスの最適設計や性能予測が困難であるという課題がある。特に、キャリア輸送特性を特徴づける移動度やドリフト速度は、SiCデバイスのオン動作時、スイッチング時、絶縁破壊時等のあらゆる状況の動作解析に不可欠な基礎物性である。本研究では、低電界における移動度と高電界におけるドリフト速度の実験的な定量と、SiCの特徴的なバンド構造に着目した理論的な解析により、異方性を考慮したSiC中のキャリア輸送機構の解明を目指す。
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研究実績の概要 |
報告者はこれまで、炭化ケイ素(SiC)中のキャリア輸送機構を明らかにすることを目的に、電子・正孔の低電界移動度にフォーカスした研究に取り組み、異方性を含めた移動度の実験的な定量および異方性の起源に関する理論的検討を行ってきた。本研究で定量した移動度は、実際のSiCデバイスの基本性能を決定する重要な指標であり、デバイスの性能予測や最適設計に有用なものである。本研究の発展として、高電界のドリフト速度に着目する。デバイスのスイッチング時、絶縁破壊時、負荷短絡時など、デバイス中に高電界が発生する状況での動作解析のためには、高電界ドリフト速度の定量が欠かせない。本年度は、SiCにおける電子・正孔の高電界ドリフト速度の定量を目指し、実験系の構築や素子構造の作製をはじめ、研究を進めた。 Time of Flight法 (試料内に意図的に過剰キャリアを発生させ、それにより試料内を流れる電流の時間変化を観測することで、ドリフト速度を直接的に決定する手法) を用い、ドリフト速度の測定を実施した。本測定にあたって、試料内部に高電界を発生させるための外部パルス高電圧源や、過剰キャリアを生成するための外部入力、信号測定用のオシロスコープ用いて測定系を新規に構築した。SiCの材料特有の課題に対し、試料構造の観点での工夫を施した測定用素子を作製し、構築した測定系を用いた測定に着手した。測定により得られた結果をもとに、高電界ドリフト速度の高精度定量に向けた試料や構造に対する必要条件など、今後の展開に繋がる知見を獲得した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの報告者の研究により、不純物密度依存性・温度依存性・輸送方向依存性を考慮した電子・正孔の低電界移動度が実験的に定量され、SiC中の低電界下のキャリア輸送機構に関する理解が大きく進展した。また、高電界ドリフト速度の定量を目指して、測定系および素子構造の設計・作製に着手するなど、電界強度依存性まで考慮したキャリア輸送機構の解明に向けた実験を着実に進めており、研究の進展はおおむね順調であると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに取り組んできた実験による結果を踏まえ、高電界ドリフト速度の高精度定量に向けて試料や構造を改良し、研究を推進する。また、材料特有の課題に対する対策として、測定手法を1つに限定せず、複数のアプローチを駆使したドリフト速度の定量手法の確立を目指す。
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