研究課題/領域番号 |
22KJ1980
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補助金の研究課題番号 |
22J22398 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分54010:血液および腫瘍内科学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
青山 有美 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
2024年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | フェロトーシス / セレノプロテイン / 急性骨髄性白血病 |
研究開始時の研究の概要 |
フェロトーシスは鉄依存的な脂質に対する酸化的損傷によって誘導される新しい細胞死である。正常細胞には酸化ストレスを最小限に抑制するためセレノプロテインによる生体防御機構が存在する。がん細胞も自身の増殖・生存にこの生体防御機構を利用しフェロトーシスを逃れていることが報告されているが、造血器腫瘍に関する報告は乏しい。 本研究では、フェロトーシス誘導が正常造血に与える影響について、セレノプロテイン合成破綻モデルを用いて明らかにする。また骨髄異形成症候群でフェロトーシスが亢進しているか、白血病でフェロトーシスが抑制されているか、フェロトーシスを誘導した場合白血病の進展を抑制できるか明らかにする。
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研究実績の概要 |
正常造血におけるセレノプロテインの役割について明らかにするために、前年度に引き続き、セレノシステインtRNA遺伝子(Trsp遺伝子)の欠失によるセレノプロテイン合成破綻マウスモデル(Trsp KOマウス)を用いてBリンパ球の分化障害について解析を進めた。LSKからBリンパ球への分化実験においてもTrsp KO細胞ではBリンパ球の分化障害がみられた。Trsp KOマウスのpre-B細胞では免疫グロブリン遺伝子再構成の低下がみられた。またTrsp KOマウスのpre-B細胞ではBリンパ球の分化に関連した遺伝子のRNA発現の低下がみられた。Trsp KOマウスのBリンパ球減少は加齢によって過酸化脂質の蓄積を伴い加速した。さらに、生体内フェロトーシス阻害物質であるビタミンE過剰飼料の投与によりBリンパ球減少は部分的に改善した。セレノプロテインの1つであるGPX4はフェロトーシス制御因子であるが、Gpx4欠失によって同様のBリンパ球減少は生じないため、GPX4以外のセレノプロテインによるフェロトーシス制御機構が存在する可能性が示唆された。 腫瘍性造血について、ROSA26CreERT2: Trspflox/flox造血幹細胞にMLL-AF9を発現させた連続移植可能な白血病モデルを作成し、移植後にタモキシフェン投与によって白血病細胞のTrspを欠失させたところ、白血病細胞の減少と生存期間の延長を認めた。この結果からセレノプロテインが白血病の進展に寄与することが明らかとなった。全セレノプロテインの阻害は正常・腫瘍性造血双方を阻害するため、治療標的となるセレノプロテインの検索目的にセレノプロテインとその合成系遺伝子のカスタムsgRNAライブラリーを作成し白血病細胞株でCRISPRスクリーニングを行った。 本研究について、2023年10月に第85回日本血液学会で口演発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
造血細胞特異的Trsp欠失(KO)マウスを用いて正常造血におけるセレノプロテインの役割について評価を行い特徴的な表現型であるBリンパ球の成熟障害について詳細な解析を行った。さらにマウスモデルを作成し腫瘍性造血におけるセレノプロテインの役割を評価することができており、おおむね順調に進捗していると評価している。 計画の変更点としては、既報の再解析により加齢によりセレノプロテインとその合成系遺伝子の発現が低下することを見出したため、加齢Trsp KOマウスの解析を行った。Trsp KOマウスのBリンパ球減少が加齢によって進行することを明らかにした。また、昨年度のビタミンE欠乏飼料によりTrsp KOマウスのBリンパ球減少が過酸化脂質の蓄積を伴い加速した結果を受けて、ビタミンE過剰飼料がTrsp KOマウスの表現型を改善するのではないかと仮説を立て、ビタミンE過剰飼料投与実験を行った。これらの実験からセレノプロテイン合成破綻の代償機構が加齢により低下すること、ビタミンEがセレノプロテイン合成破綻時に重要な役割を果たしている可能性が明らかとなった。 腫瘍性造血については全セレノプロテインの役割から、それぞれのセレノプロテインの機能を明らかにするという、より発展的な課題をCRISPRスクリーニングを用いて明らかにしようとしており、実際に白血病細胞株で標的の絞り込みを行っている。
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今後の研究の推進方策 |
正常造血におけるセレノプロテインの役割について、上記結果を昨年度の結果に追加した上で、原著論文を執筆中であり、信頼性の高いジャーナルへの投稿を行う方針である。 さらに、個々のセレノプロテインへの依存性が分化段階によって異なる可能性を示唆する結果を得ており、CRISPRスクリーニングやそれぞれのセレノプロテイン阻害剤を用いて、分化段階ごとに重要となるセレノプロテインの特定を行う。 腫瘍性造血について、Trsp KO白血病モデルマウスについて過酸化脂質の解析やビタミンE欠乏飼料、ビタミンE過剰飼料投与実験を行うとともに、CRISPRスクリーニングで特定したセレノプロテインについて阻害剤などを用いて治療効果を検討する方針である。
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