研究課題/領域番号 |
22KJ1984
|
補助金の研究課題番号 |
22J22520 (2022)
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
北村 泰晟 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
2024年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
|
キーワード | 量子幾何学 / 強磁性 / スピン3重項超伝導 / 量子幾何効果 / 超伝導 / FFLO超伝導 / アナポール超伝導 |
研究開始時の研究の概要 |
量子幾何効果とはブロッホ電子の波数空間上の性質が物理現象に与える影響である.近年の研究により,様々な物理現象において量子幾何効果が現れることが明らかになったが,現実の物質に即した研究はほとんど行われていない.本研究では現実の物質における量子幾何効果の解明を目指す.特に,量子幾何効果に特有な新規物理現象,トポロジカル物質における量子幾何効果,多体・強相関効果の量子幾何効果への影響,の3つの解明を目指す.
|
研究実績の概要 |
本研究は量子幾何効果の現実の物質への影響を解明することを目的としている。前年度までの研究や従来の量子幾何効果に関する研究では、多体相互作用を含まない1粒子問題を主に扱ってきた。そのため、多体問題に対する量子幾何効果は現在まで研究されてこなかった。そこで、本年度は主に、多体効果により出現する、磁性と超伝導などの多体秩序相に対する量子幾何効果の研究に取り組んだ。 まず、強磁性(揺らぎ)が出現するための判定条件を定式化し、その判定条件に量子幾何が現れることを示した。この判定条件を詳しく解析することにより、量子幾何が強磁性を誘起する条件を同定した。この量子幾何誘起強磁性の機構では、代表的な量子幾何学量である量子計量が主要な役割を担っている。また具体的なモデル計算により、量子幾何誘起の強磁性とその揺らぎによるスピン三重項超伝導のデモンストレーションを行った。スピン三重項超伝導体はスピンを持つ非従来型の超伝導体であり、その候補物質が少ないことが問題であった。一方本研究で提案した量子幾何によるスピン三重項超伝導は、新規なスピン三重項超伝導の実現方法であり、新たなスピン三重項超伝導探索のための指針となり得る。 加えて、前年度に引き続き、1粒子問題に対する量子幾何効果に関しても主に共同研究にて取り組んだ。その結果、多バンド超伝導体の量子幾何効果を定量化する量子幾何ペアポテンシャルの提案に成功した。これを用いて、グローバルまたはローカルに空間反転対称性の破れた超伝導体を解析し、これらの超伝導体にて量子幾何が重要となる条件を同定した。この解析では、磁場空間での量子幾何学という新しい概念も導入した。さらに、グローバルに空間反転対称性の破れた系においては、量子幾何効果が誘起するトポロジカル超伝導の存在も示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画を超えて、世界で初めて量子幾何が量子多体系の相転移に影響を与えることを示した。量子幾何と多体現象は一見関係の無い話題であり、その関係性を指摘した本成果は驚くべき結果である。また、相転移は物性物理の根幹をなす現象である。そのため、本研究でこの多体現象に量子幾何が主要な役割を果たすことを示したことで、量子幾何学の概念そのものが物性物理の理解において必要不可欠であることが明らかとなった。また、本年度で定式化した相転移への量子幾何効果はかなり一般的なものであり、量子多体系の多彩な相転移への拡張が可能である。このように、本研究は今後の多体現象への量子幾何効果の研究の基礎となるものである。加えて、超伝導体における量子幾何効果の研究にも進展があり、本年度は多方面から量子幾何学の研究を進めることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、本年度の成果に基づき、多体現象への量子幾何効果の研究を発展させる。具体的には、量子幾何誘起の強磁性・スピン3重項超伝導の一般的な条件の導出や、本年度の成果の多極子秩序や集団励起へのを拡張を行う。また同時に、超伝導体の量子幾何効果の研究も続ける。本年度の研究により、量子幾何効果は種々の超伝導現象にも現れることが明らかとなった。そこで、超伝導体の量子幾何効果を研究する上で問題となる、量子幾何効果の格子構造依存性について、種々の超伝導現象にて解析を進める予定である。
|