研究課題/領域番号 |
22KJ1987
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補助金の研究課題番号 |
22J22729 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分90110:生体医工学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
吉本 昂希 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
2024年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2023年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2022年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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キーワード | 人工肝臓 / 周期的力学刺激 / 血管新生因子 / 発生初期肝臓 / マイクロ流体デバイス / バイオメカニクス / ヒト多能性幹細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
ヒト多能性幹細胞(hPSCs)から分化して得られる肝臓オルガノイドなどの人工肝臓は、再生医療や創薬への応用が期待されている一方、生体が本来持つ肝機能を発揮するには至っていない。これは、成長因子などの化学的因子だけを用いる従来の肝分化誘導法に加えて、新しいアプローチが必要であることを意味している。肝臓発生において、呼吸様運動などの刺激が影響していると考えられるが、これらの肝臓発生や機能発現への寄与は不明なままである。そこで本研究では、hPSCsから人工肝臓の発生過程・機能発現における振動的圧縮刺激の寄与と、その機構を解明する。
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研究実績の概要 |
今年度は周期的伸展力学刺激を分化誘導した発生初期肝臓の構成細胞に与え,その影響を評価した.まず,力学刺激条件下で細胞死や脱分化が生じないないことを証明するために,発生初期段の肝臓に特異的酵素, CytochromeP450 3A7(CYP3A7)の活性を様々な強さの力学条件で測定した.その結果,開発したデバイス上で実現できる力学刺激の大きさ(ウェルの中心のひずみ:0-12%)において,ウェルの中心のひずみが12%に近づくほどCYP3A7の活性は上昇し,細胞死や脱分化が起こらないことを明らかにした.その後,力学刺激の全体的な影響を評価するため,周期的力学刺激が12%の時のひずみ条件下培養した発生初期肝臓の構成細胞のRNAを抽出し,Bulk RNA sequenceを用いて,力学刺激によって上昇した遺伝子を解析した.解析によって,発生初期の肝臓の血管新生に関連するHepatocyte growth factor(HGF),matrix metalloproteinase9 (MMP9),Twist-related protein 1といった遺伝子の有意な上昇が見られた.RNA-sequenceの結果から生物学的意義を明らかにするために,Gene ontology解析も行った結果,血管新生に関わるTermも確認された.これらの結果から,発生初期肝臓の構成細胞への周期的伸展力学刺激は血管新生を促進する可能性が示唆された. 力学刺激の血管新生への影響をさらに詳しく調べるために,血管新生因子であり,RNA-sequenceでも上昇が確認できたHGFとMMP9の分泌量に着目した.HGFとMMP9の分泌量は付与する力学刺激の周期が周期に相関して上昇した. 以上より,周期的伸展力学刺激は発生初期肝臓において,血管新生を促進する役割がある可能性がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初目的にしていた,発生初期の肝臓における周期的力学刺激の影響を調べることを達成しただけではなく,周期的力学刺激が血管新生に関わる可能性を見出した.近年開発されている人工肝臓では,灌流が実現されていないことから,申請者は周期的力学刺激を用いて灌流可能な血管を有した人工肝臓の開発に有用することを考えた.その上で,申請者は3次元培養している組織に周期的力学刺激を付与する装置の開発を行なっており,開発中の装置が完成に近づいている.
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は肝臓オルガノイド培養法と3次元培養組織に周期的伸展力学刺激の付与が可能な新しいデバイスを開発することで,周期的伸展力学刺激が血管新生を促進することを生体外で実証する.
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