研究課題/領域番号 |
22KJ1993
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補助金の研究課題番号 |
22J22920 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分26050:材料加工および組織制御関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
村上 勇樹 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
2024年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | ミディアムエントロピー合金 / 合金電析 / 合金めっき / エマルション / イオン液体 / 分子動力学シミュレーション / ハイエントロピー合金 / エマルジョン / 電析 / めっき |
研究開始時の研究の概要 |
ハイエントロピー合金(HEA)はほぼ等原子比率の5種類以上の元素で構成される単相固溶体であり,従来の合金に比べて優れた機械特性を示すため,電気めっきによる表面処理皮膜への応用が期待されている.しかし,HEAを構成する各元素は一般に平衡電位が異なるため,通常の電解プロセスではHEAに求められる等原子比率を達成できない.そこで,金属イオンを電解液滴中に閉じ込めることで,液滴が電極と接触した際に瞬間的に電析を起こさせ,等原子比率を実現できると考えた.本研究では電解液としてwater-in-oil型エマルジョンを用いて,HEAめっき手法の確立と高硬度・高耐食性HEAめっきの作製を目指す.
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研究実績の概要 |
昨年度までの研究によりwater-in-oil型エマルションを電解液に用いて,合金の前駆体である金属イオンを微小な水滴中に閉じ込めることでCoNiCuからなるミディアムエントロピー合金(MEA)の電析に成功していた.当該年度では,これまでのCoNiCu MEA電析手法を発展させて,構成元素の組み合わせを変更したCrCoNi MEAの電析に取り組んだ.CrCoNi MEAは鋳造により作製したバルク材についてハイエントロピー合金(HEA)やMEAの中で最も優れた強度-靭性バランスをもち,耐食性も高いことが知られている.しかし,これまで用いていたエマルションでは水滴中のクロム(III)イオンが不活性な錯体を形成し,CrCoNi MEAを電析することはできなかった.エマルションにおいてMEAを電析するための必要条件は金属イオンの拡散を不連続かつ,遅くすることであった.これら条件を満たす新たな溶液としてイオン液体-水溶液の混合溶液に注目した.イオン液体は分子内に極性部位と非極性部位をあわせもち,それらが互いに自己集合して極性ドメインと非極性ドメインを形成する.これを用いて電析した際には,溶液中の非極性ドメインがエマルションにおける油相と類似の働きをして,金属イオンの供給を抑制することでCrCoNi MEAの電析に成功した.さらに,この混合溶液について分子動力学シミュレーションを行い,極性・非極性ドメインに相分離した溶液構造を有することを計算的に示した.シミュレーションの結果から溶液中の金属イオンの拡散係数や動径分布関数を調べ,バルクの水溶液とは異なるイオン液体-水溶液の混合溶液に特有の溶液構造がCrCoNi MEA電析を可能にしていることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当該年度の研究により,エマルション電解液を用いる利点と欠点を整理し,エマルションからMEAが電析できる本質的な理由を明らかにした.その結果をもとに類似した溶液構造をもつ新たなMEA電析浴としてイオン液体-水溶液の混合溶液を提案した.この手法により,これまで未達成であったCrCoNi MEAを速い成膜速度で電析できることを示した.さらに,イオン液体-水溶液の混合溶液の構造を実験により測定することは困難であったため分子動力学シミュレーションを用いて溶液構造の推定に取り組んだ.得られた結果から,この混合溶液を用いてCrCoNi MEAが電析できる理由を考察した.これら成果について学会発表と学術論文の投稿を行なっている.
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今後の研究の推進方策 |
鋳造により作製したバルクCrCoNi MEAの機械特性や耐食性はすでに報告されているが,電析により作製したCrCoNi MEAがバルクと同じ特性を示すとは限らないため,電析CrCoNi MEAの各種特性を評価する.めっき膜として利用する際に重要な硬度や耐摩耗性の評価をナノインデンターにより実施する.めっき膜の耐食性は塩化ナトリウムまたは希硫酸水溶液中での電気化学分極試験や塩水噴霧試験を用いて工業的によく用いられる硬質クロムめっきと比較して評価する.
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