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逃避行動を環境変化に適応して調節する神経メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 22KJ1999
補助金の研究課題番号 22J23235 (2022)
研究種目

特別研究員奨励費

配分区分基金 (2023)
補助金 (2022)
応募区分国内
審査区分 小区分44050:動物生理化学、生理学および行動学関連
研究機関京都大学

研究代表者

司 悠真  京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2023-03-08 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
2,800千円 (直接経費: 2,800千円)
2024年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2022年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
キーワード環境ストレス / ショウジョウバエ / 中枢ニューロン / 痛覚 / 浸透圧 / 情報統合 / 神経ペプチド / 内部状態 / 神経調節 / 侵害性伝達 / 逃避行動 / 感覚統合
研究開始時の研究の概要

近い将来に生じうる身の危険を予測して事前にリスクに備えることは、生き物が生存していく上で重要な生物機能である。しかし、環境情報を統合して行動を調節する神経メカニズムの多くは不明である。本研究ではショウジョウバエ幼虫が寄生蜂の産卵攻撃から逃れる逃避行動を題材に、われわれが発見した遺伝子belly rollが環境情報を統合して逃避行動を調節するメカニズムを追究する。環境情報を統合して行動を調節するメカニズムを解明することにより、本能行動を調節する遺伝子と環境要因との相互作用の理解を深化できる。

研究実績の概要

本研究の目的は、様々な環境ストレスを統合し、逃避行動を調節する神経回路基盤と細胞生理メカニズムを明らかにすることである。われわれは、ショウジョウバエ幼虫の中枢ニューロンの痛覚応答におけるbelly roll(bero)遺伝子の重要性を明らかにし、その成果を国際学術誌でオープンアクセス論文として発表した(Li et al., eLife, 2023)。本研究において、報告者はbero遺伝子の発現阻害下で中枢ニューロンの神経活動を観察し、bero遺伝子が中枢ニューロンの痛覚刺激に対する応答を抑制する機能をもつことを明らかにした。さらに、この中枢ニューロンが産生する神経伝達物質の探索を行い、哺乳類におけるノルアドレナリンに相当するオクトパミンまたはチラミンを産生することを発見した。本研究成果は、プレスリリースとして一般向けにも紹介されている(https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2023-06-14-1)
報告者はさらに、中枢ニューロンの痛覚刺激に対する応答が体液浸透圧によって調節されることを発見し、このニューロンが体液浸透圧と痛覚刺激を統合する神経メカニズムを、明らかにしてきた。中枢ニューロンにおける浸透圧と痛覚の情報統合にはBeroが必須である。さらに、Beroの機能的な標的候補を探索し、神経ペプチド受容体を同定した。本年度は、中枢ニューロンにおける神経ペプチド受容体の機能解析を中心に、個体の内部状態依存的に神経活動が調節されるメカニズムを検証した。これらの研究成果は各学会で発表している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本年度は予定通り、神経ペプチド受容体が活性化されるメカニズムについて検証し、Beroが重要な働きを果たすことを明らかにできた。また、本年度は体液浸透圧を上昇させる環境ストレスである乾燥ストレスに動物を暴露し、行動がどのように調節されるかを検証した。当初の期待通り、乾燥ストレス処理は寄生蜂の攻撃を回避するための逃避行動を促進することを明らかにした。
一方、本研究を実施中、想定外にもショウジョウバエ幼虫が乾燥した表面から逃れる忌避行動(乾燥表面忌避行動)を示すことを発見した。そして、この行動も乾燥ストレス処理によって促進されることを見い出した。詳しい解析から、この乾燥表面忌避行動は、報告者が解析していたbero遺伝子を発現する中枢ニューロンによって制御されていることが示唆されている。乾燥表面忌避行動は現在のところ報告された例がなく、この点でも当初の期待を大きく上回っていると考えている。

今後の研究の推進方策

上述した通り、現在までの進捗状況は当初の計画を大きく上回っている。そこで、本研究の目的である「環境ストレスを統合し逃避行動を調節するメカニズムの解明」という方針に加えて、報告者が新たに発見した乾燥表面忌避行動を調節する分子メカニズムを解析するとともに、その進化生態学的な重要性を検証する研究を実施したいと考えている。そのために、キイロショウジョウバエと多様な環境に生息するショウジョウバエ近縁種群との間で、乾燥表面忌避行動の観察と行動関連遺伝子の発現パターンの比較解析を実施する予定である。これらの研究成果を報告するために、原著論文を執筆し発表する。

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実績報告書
  • 研究成果

    (7件)

すべて 2024 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Belly roll, a GPI-anchored Ly6 protein, regulates Drosophila melanogaster escape behaviors by modulating the excitability of nociceptive peptidergic interneurons2023

    • 著者名/発表者名
      Li Kai、Tsukasa Yuma、Kurio Misato、Maeta Kaho、Tsumadori Akimitsu、Baba Shumpei、Nishimura Risa、Murakami Akira、Onodera Koun、Morimoto Takako、Uemura Tadashi、Usui Tadao
    • 雑誌名

      eLife

      巻: 12 ページ: 1-31

    • DOI

      10.7554/elife.83856

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Hemolymph osmolality gates nociceptive transmission via atypical GPCR signaling2024

    • 著者名/発表者名
      Yuma Tsukasa, Misato Kurio, Kaho Maeta, Kai Li, Tadashi Uemura, and Tadao Usui
    • 学会等名
      Asia Pacific Drosophila Neurobiology Conference 3
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] Hemolymph osmolality gates nociceptive transmission via atypical GPCR signaling2024

    • 著者名/発表者名
      Yuma Tsukasa, Misato Kurio, Kaho Maeta, Kai Li, Tadashi Uemura, and Tadao Usui
    • 学会等名
      20th Biostudies Student Symposium
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Fluid osmolality gates nociceptive escape behaviors in Drosophila larvae2023

    • 著者名/発表者名
      Yuma Tsukasa, Misato Kurio, Kaho Maeta, Kai Li, Tadashi Uemura, and Tadao Usui
    • 学会等名
      第46回日本分子生物学会, 2023
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] The novel Ly6/α-Neurotoxin family protein, Belly roll, regulates the nociceptive transmission in response to the fluid osmolality2022

    • 著者名/発表者名
      Yuma Tsukasa, Kai Li, Misato Kurio, Kaho Maeta, Akimitsu Tsumadori, Shumpei Baba, Risa Nishimura, Koun Onodera, Takako Morimoto, Tadashi Uemura and Tadao Usui
    • 学会等名
      Neuro2022
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会発表] キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)における体液浸透圧依存的な痛覚逃避行動の調節機構2022

    • 著者名/発表者名
      Yuma Tsukasa, Kai Li, Misato Kurio, Kaho Maeta, Akimitsu Tsumadori, Shumpei Baba, Risa Nishimura, Koun Onodera, Takako Morimoto, Tadashi Uemura and Tadao Usu
    • 学会等名
      第93回動物学会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会発表] The internal state-dependent modulation of the nociceptive transmission2022

    • 著者名/発表者名
      Yuma Tsukasa, Kai Li, Misato Kurio, Kaho Maeta, Akimitsu Tsumadori, Shumpei Baba, Risa Nishimura, Koun Onodera, Takako Morimoto, Tadashi Uemura and Tadao Usu
    • 学会等名
      JDRC15th
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書

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公開日: 2022-04-28   更新日: 2024-12-25  

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