研究課題/領域番号 |
22KJ2001
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補助金の研究課題番号 |
22J23278 (2022)
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 (2023) 補助金 (2022) |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分45040:生態学および環境学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤島 幹汰 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
2024年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2023年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2022年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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キーワード | 安定同位体比分析 / ニッチ分割 / 捕食者被食者間相互作用 / 対捕食者行動 / 爬虫類 / ヘビ亜目 / パフォーマンス / ハビタット利用 / 採餌生態 / 標識再捕獲調査 / 生活史 / ハゼ科 / ウミヘビ |
研究開始時の研究の概要 |
ハゼ類の多くは、捕食者から逃れるために甲殻類の掘った巣穴を利用し、その宿主と共生関係にあるが、爬虫類のウミヘビ類にはその巣穴への侵入およびハゼの捕食に特化した種が存在する。本研究では、琉球列島に生息するクロボシウミヘビによる捕食圧が、ケショウハゼの共生様式とそれに伴う対捕食者行動にどのような影響を及ぼしているのかについて、野外および水槽内での行動観察によって精査し、捕食回避機能を持つ共生関係における宿主選択の進化について考察する。
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研究実績の概要 |
前年に引き続き、沖縄県名護市でのクロボシウミヘビおよびクロガシラウミヘビの標識再捕獲調査を継続し、胃内容物や安定同位体比分析用のサンプルを蓄積した。京都大学生態学研究センターにてウミヘビ類の複数組織(赤血球、血漿、鱗)を用いた安定同位体比分析を実施した。その結果、クロボシウミヘビは個体群としての同位体ニッチが比較的狭く、スペシャリスト傾向を示した。一方、同所的に生息するクロガシラウミヘビやエラブウミヘビは個体群としては広い同位体ニッチを示すが、個体レベルではニッチの特殊化が見られた。 ウミヘビ類とハゼ類の捕食者-被食者間相互作用に関して、クロボシウミヘビと系統的に離れたエラブウミヘビの幼体が、テッポウエビと相利共生関係にあるヒメダテハゼの巣穴を狙って索餌する行動が観察された。そこでヒメダテハゼがエラブウミヘビの接近に伴い、巣穴の外に逃げる場合があることを発見した。これまでヒメダテハゼをはじめとした共生ハゼ類は、捕食者が接近すると宿主のテッポウエビにシグナルを送り、ともに巣穴に逃げ込むことのみが知られており、巣穴の外に逃げる行動は初めての記録となる。 ウミヘビ類の採餌行動や採餌環境の種間差と関連して、遊泳力とそれに関連した形態形質を計測する研究を開始した。長さ2.5 mの水槽で瞬発力の指標となる最大遊泳速度を、流速を設定できる回流水槽で持久力の指標となる臨界遊泳速度を測った。半水棲のエラブウミヘビ類が完全海棲の胎生ウミヘビ類よりも最大遊泳速度、臨界遊泳速度ともに高い結果が得られた。遊泳力は、行動圏の広さや、ハビタットの潮流の速さと関連する可能性が示唆された。 野外でのクロボシウミヘビの採餌環境利用を調べるため、動物装着型のデータロガーを取り付け放流・再捕獲する研究を開始した。すでに1個体の1ヶ月におよぶ詳細な深度・温度の経時的記録が得られている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りには進んでいない部分に関して、代替研究計画が順調に進んでいる。 前年に引き続き、ウミヘビ類の野外観察、胃内容物調査、標識再捕獲調査、安定同位体比分析を実施した。これによりウミヘビ類において不足している生活史情報が蓄積された。ウミヘビ類の採餌生態の面では本研究は順調に進行している。 当初のケショウハゼ-クロボシウミヘビの相互作用の研究に関して、相互作用の野外観察、および当初の対象種ケショウハゼの対捕食者行動を実験的に発現させることが手法上かなり難しいことが前年度の実施により判明した。一方、本年は別種エラブウミヘビとヒメダテハゼの相互作用が観察され、ヒメダテハゼの新規な対捕食者行動が見られたことから、新たな進展があった。 ウミヘビ類の採餌環境選択と遊泳力の関連性を探る研究はすでに遊泳実験を開始しており、順調に進んでいる。 クロボシウミヘビの環境利用を探るためのデータロガーを利用した研究はすでに1個体で約1ヶ月間の詳細な深度・温度の経時的記録が得られたことから、順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
当初のハゼ類とウミヘビ類の相互作用の実験的な観察が手法上難しいと判明したことを受け、その野外観察データを引き続き蓄積しつつ、ウミヘビ類の採餌様式、環境利用様式と遊泳力の関連性を探る研究を新たに発足した。後者に関して、今後、ウミヘビ類の遊泳力測定を引き続き実施する。また、遊泳力と関連する形態形質として、外部形態形質に加え、内部形態形質として体軸筋肉の解剖学的構造をμCTスキャンにより精査する予定である。 クロボシウミヘビの環境利用様式を調べるため、引き続き動物装着型データロガーの野外個体への装着と回収をおこなう。 ウミヘビ類の胃内容物分析および安定同位体比分析から得られた成果をまとめて、国際学術誌での発表をおこなう。その他の研究成果についても、随時、国内外の研究集会や、国際学術誌にて発表する。
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